#14「やりとり機会を創出する①」で教師とのやりとりができそうになってきている場合は、段階的に子ども同士のやりとり機会を増やしていく必要があります。
これまで教師が行っていた活動を子どもに移行していくことは、#03で触れた子どもの「待ち時間」を減らすことにもつながります。
例えば、朝の会など授業の進行を子どもが担っている場面を見掛けますが、こうした活動はとても大事だと考えています。
しかし、子どもの様子を見ていると、進行している子どもは原稿を読み上げるだけになっていたり、機械的な進行になっていたりする場合や、聞き手側の子どもは司会役の子どもを意識していない場合があります。
ただ単に進行をしているだけでは、進行も上手にならないので、どこを見て話せばよいか、声の大きさはどの程度か、聞き手側の子どもが話を聞いていない場合の対応など、子どもの実態に応じて指導を行うことが大切になります。
また、聞き手役の子どもについても同様に、進行役の子どもに注目して、反応できるよう指導を行うことが大切になります。
障がいの状態や特性は一人一人異なるため、簡単には行きませんが、子ども同士のやりとりが進むと、先生が子どもに指示・説明する授業ではなく、子どもに気付かせるような働き掛けが増えるようになるなど、先生方の教え方が変わる事例をたくさん見てきました。
子どものもつ能力や可能性を高めるためにも、やりとり機会を増やす取組に、ぜひチャレンジしてみてください!
#03「「準備」と「後片付け」を大切にする」とも関連しますが、普段の何気ない活動の中にも、やりとりの機会があります。
例えば、個別指導の場面で、学習に使うプリント等を入れているA4のカゴを先生がとって準備をするのか、子どもが準備をするのかでやりとり機会の回数は変わってきます。
また、せっかく後者の方法を用いていても、子どもが雑にカゴを取り扱っているようでは、学習(やりとり)効果も半減します。カゴを持つときに、正しい位置を持つことを教えることも大事なやりとりの機会になりますし、カゴを直接、机に置くことよりも、先生の声掛けに合わせ、先生を意識してカゴを手渡すことも大事なやりとりの機会です。
さらに、#01「「質」と「量」を考える」とも関連しますが、次のような場面も貴重なやりとりの機会になります。
個別指導の場面で、文字(単語)カードとイラストのマッチングを行っている場面を見掛けますが、ただ単にマッチングするだけでは学習機会が半減します。
文字カードを手渡すときに発語を促したり、イラストが示す様子をジェスチャーで促したりするなどが考えられます。
今一度、知的障がいのある子どもの学習上の特性はもとより、普段の何気ない活動を振り返り、子どもとやりとりする機会を大切にすることが重要と考えています。
※6月の本校職員会議でお話した内容です
・ 従前までの学習指導要領と異なり、現行の学習指導要領は小・中・高校との教育課程の 連続性が重視されていること。
・ 教科等の目標は小学部では3段階、中学部では2段階、高等部では2段階で示されてお り、学習指導要領に定められた目標に準拠した評価が求められていること
・ 単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫する必要 があること
などをしっかりと抑えておく必要があります。
そのため、個別の指導計画を作成するに当たって、教科等の目標として読み取れないものや目標を具体的に示すことは重要ですが、限定的になっているものについては注意が必要です。
また、本校では日常生活の指導、生活単元学習、作業学習を実施していますが、個別の指導計画の目標をみると、知識・技能に偏りが見られます(#06、07、08参照)。
生活単元学習では目標意識や課題意識、課題解決への意欲を育む活動であることや、作業学習では活動の意義や価値に触れ、喜びや感性の成就感を得ることなど、学習指導要領の解説(小中はP31、高等部P33)に各教科等を合わせた指導の特徴と留意点が示されています。
今年度の重点(グランドデザイン)にも「根拠に基づいた授業づくり」を位置付けています。是非この機会に学習指導要領の解説を見開き、御自身が書いた個別の指導計画の目標や日々の授業を検証し、今後の指導に役立ててほしいと考えています。
※6月の本校職員会議でお話した内容です
障がいのある子どもが育成を目指す資質能力を身に付ける上で、自立活動は土台となるものであること、子どもを主語とした領域であることを抑えていく必要があります。
・指導内容ありきではなく、子どもの実態に応じて具体的な指導内容を設定する必要があ ること。
・6区分27項目全てを教える必要はなく(項目によっては特定の障がいに種に特化して います)、必要な区分・項目を組み合わせて指導する必要があること
などを熟知しておく必要があります。
例えば、本校の児童生徒の個別の指導計画(自立活動)の目標を見ていると、「絵カードを使って教師に要求を伝える」といった目標があります。
中心となる自立活動の区分・項目はコミュニケーションとなりがちですが、必ずしもそうならない場合があります。
このときのポイントは「絵カードを使って要求を伝える」上での実態をしっかり捉えることです。
・「人への意識を高めたい」ということであれば人間関係の形成
・「要求と絵カードを一致させる」ということであれば環境の把握
・「初歩的なコミュニケーション」ということであれば、コミュニケーション
となります。
このように一人一人の実態を丁寧に捉えたうえで指導を行うのが自立活動であり、「子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う」という特別支援教育の理念につながっています。
なお、本校の児童生徒の自立活動の目標を見ると、コミュニケーションの項目を挙げているケースが多くありますが、自立活動の解説を読み込むと、コミュニケーションの項目は発達順に(1)~(5)が示されており、中でも(3)や(4)は視覚障がいや聴覚障がいの子どもがメインになっていることが分かります。
今年度の重点(グランドデザイン)にも「根拠に基づいた授業づくり」を位置付けています。是非この機会に自立活動の解説を見開き、御自身が書いた個別の指導計画の目標を検証し、今後の指導に役立ててほしいと考えています。
図工や美術の時間に「枠からはみ出さずに色を塗る」ことに取り組んでいる場面を見掛けます。この課題を達成するには、手指の巧緻性や認知面など、様々な条件が必要となりますが、枠をはみ出さずに色を塗れる子どもと、はみ出してしまう子どもでは、社会性の育ちに大きな違いがあります。
同様に、課題学習等で行っている色と形のマトリクス課題。一般的な発達は①色の分別、②形の分別、③色と形の弁別と進みますが、③ができるようになると、2つの条件を理解していることになりますので、状況を見る力(社会性)育ってきているということになります。
2つの例を示しましたが、こうした課題に取り組む上でも#05の指差し対応弁別は指示に従う(社会性を伸ばす)重要な課題です。
社会性を伸ばしたい子どもはたくさんいると思いますが、年齢が低いうちに認知発達を促していくことが結果的には早道なのかもしれません。
こうした日常の学習を通してアセスメントしていくことも大切だと考えています。
先生との個別指導で、いわゆるジグソーパズルを行っている場面をよく見掛けます。先生が自作した教材で4ピースや6ピースなど、工夫されているものもあれば、20~30ピース程度ある市販のパズルを使っている場合もあります。
ジグソーパズルは、完成したときの絵のイメージを、もてていなくても、ピースの形が分かれば完成させることができるという特徴があります。
完成したときのイメージを、もてている子どもは、子どもなりに考えて、ピースをはめていきますが、そうでない子どもは#05の②で触れた対応弁別が困難な状態で、手当たり次第にピースを置いたり、端から順に置こうとしたりします。
ジグソーパズルを使って認知を伸ばすのは経験上6ピース程度の教材を使い、子どもが、完成形をイメージしながら課題に取り組むことが大切と考えます(20~30ピースのものは一定時間集中して取り組む力は求められますが、認知を伸ばすことにはあまりつながらず、余暇として取り上げた方が良いのかもしれません)。
6ピース程度のジグソーパズルができたら、どうするか。切片パズルに取り組むことが考えられます。
ジグソーパズルは形を見て課題を遂行しますが、切片パズルは線と絵全体を見ながら課題を遂行しなければならず、ここにも発達的に大きな意味があります。
6~8ピース程度の切片パズルが安定的にできるようになると、線(細部)を見極める力やイメージする力、概念が身に付いてきていますので、文字学習への発展が期待できます。
#8で「単元の見通し」について触れましたが、ある学校でのエピソードを紹介します。
A校では高等部祭で販売するお皿づくりに励んでいました。生徒が私に学習内容を説明してくれたので、私は「そのお皿いくらで売るの?」と聞きました。すると、その生徒は「分からないので先生に聞いてくる」と言って先生のところへ行きました。戻ってくると、その生徒は私に「200円です」と教えてくれました。私はさらにその生徒に「それって高いの?安いの?」と聞きましたがその生徒は困っていました。さらに私の質問は続きます。「粘土1㎏の値段は?」粘土1㎏からお皿何枚作れるの?」「釉薬はいくらするの?」生徒が困ると思ってした質問のはずが、生徒の顔が輝き始めました。そして最後の質問は「最低賃金はいくらなの?」。すると、生徒はそれぞれに「安い」「高い」などと自分の意見を言い始めました(これらの質問は思い付きではなく、特別支援学校学習指導要領解説 知的障害者教科等編(下)P253,イ 工業の基礎に基づいています)。
B校では秋晴れの日に作業学習で窓拭きをしていました。私が「今日は天気がいいので窓拭きもはかどるね」と生徒に言ったところ、その生徒からは、「天気が良すぎる日は窓拭きに適していません」と返ってきました。私は「どうして?」と聞くと、その生徒は「窓がすぐに乾くからです」と言いました。
A校とB校との違いはどこにあるか。一言で言うと「教え方」です。皿をつくるという活動そのものしか教えていないA校(#04で触れた未学習、不足学習とも言えます)に対し、B校は活動がもつ本質的なことを丁寧に繰り返し教えた結果、生徒が体験や実感に基づいて表現できていると言えます。
生徒のもつ能力や可能性を高めるには、先生方がチームになり、単元を見通した指導が効果的といえます。
① その活動の見通しです。
例えば音楽の時間に、「はじめのあいさつ」「歌を3回歌う」「楽器を演奏」「終わりのあいさつ」というように、この時間の流れを示す見通しです。本校のみならず、各校でイラストや文字などを使って伝えています。
② 単元の見通しです。
例えば、単元のはじめに「学習に取り組む必然性」や単元が終わったときに、「何ができるようになるか」を子ども自身が理解するための見通しです。
①は知的障がいや自閉症のある子どもへのエチケットとして、浸透していますが、①に終始すると、活動することが目的になり、評価をするときに困ります。
②はどうでしょう。①に比べるとハードルが高いように思います(本来身に付けるべき、教科等の内容を意識する必要がありそうです)。
子どもの実態から単元の見通しを伝える難しさはあると思いますが、①に偏ってしまうと単元を見通す学習を経験しなかったり、不足したりする(#04参照)可能性もあります。
繰り返しの学習を得意とする子どもが多く在籍しています。単元を見通して、どのような力を身に付けさせたいか、この授業で何をねらうのかを明確にした上で、子どもに丁寧に働き掛けていくことが大切と考えています。
「授業改善」と聞いて、それぞれの先生がイメージする事柄はそれぞれに異なると思います。ティーム・ティーチングで指導することが多い特別支援学校では先生方のイメージを共有することから授業改善は始まります。
授業改善は目的ではなく、手段であり、目指すべき方向性は学校教育目標を達成することにあります。学校教育目標では漠然としすぎていると感じる場合には、今年度の重点「チームで、より子どもたちのためになる・・・」や学部の目標、学級経営目標に基づき授業改善を行うことになります。
次にどの授業を改善するかですが、1週間に1度しかない授業を改善することは成果も見えにくく、すごく難しいと思います。毎日行っている授業であれば週に5回改善を行うことができます。
本校・分校とも総授業時数における「指導の形態」の割合を見ると、日常生活の指導が最も多いことが分かります。
集団の指導であれば、朝の会や帰りの会ということになりますが、朝の会等はパターン化されている場合がほとんどで、授業改善の対象となっていないように感じることも少なくなく、もったいないと感じることがあります。
朝の会等の構成を分析すると、学習の基盤となる資質・能力(言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力)が多く含まれています。
こうした資質・能力と学校教育目標等をリンクさせながら授業改善を行い、他の指導形態の授業改善につなげていくことは、「教科等横断的な指導」につながるだけでなく、断片的に学ぶことが多い知的障がいのある子どもの学習上の特性に合致した指導と言えます。
こうしたプロセスを共有した上で、これまで当たり前に行っていた授業をチームで見直して行くことが授業改善への第一歩なのかもしれません。
個別の指導計画は、個々の児童の実態に応じて 適切な指導を行うために学校で作成されるものです。
教育課程は、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を児童生徒の心身の発達の状況に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画です。
この2つをつなげて考えることがとても重要です。
「個別の指導計画の教科等の目標を見て教育課程をイメージできるものになっているか、どうか」ということです。
例えば、本校の小学部1年生は年間の総時数944時間を計画しており、日常生活の指導604時間、生活単元学習34時間などとなっています。さらに掘り下げると、日常生活の指導の604時間でどういった指導内容を取り上げているか、日生で取り上げる複数の指導内容の割合はどうなっているか、そしてそれらに基づき、個別の指導計画が作成されているかどうかがポイントになります。
本校・分校とも2期制で目標を立て、評価をしていることから、半年間を見通した目標を立てることも大切になると思います。
個別の指導計画を作成するときに、しっくりこない場合は、
・教科等の年間指導計画(配当時数や指導内容)が児童生徒の実態に合っていない
・個の実態を注視しすぎるあまり、学習指導要領で示されている教科等の目標や内容と乖離している
ことなどが考えられます。
この時期に改めて、個別の指導計画や学部の教育課程(年間指導計画)を点検してみてください。
令和8年度の七飯養護学校では「子どもを真ん中に」を合言葉に、保護者や地域の皆様と共に歩む学校づくりを進めてまいります。
学校経営方針を具体化するため、教職員のプロジェクトチームを中心に本年度の教育活動のグランドデザインを策定しました。