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2026年7月の記事一覧

#55 保護者の心に寄り添う「伝える技術」(令和8年5月11日)

〜響き合うパートナーシップを目指して〜

保護者との懇談は、私たちが日頃の指導の成果を伝えるだけでなく、保護者の皆様の「願い」や「迷い」を丁寧に受け止める大切な機会です。より良い連携のために、以下の4つのポイントを意識してみましょう。

1 「事実」に「感情の彩り」を添えて伝える

単に「〜ができました」という報告だけで終わらせず、その時のお子様の表情や、教師がどう感じたかをセットで伝えます。

・△  無機質な報告:「今日は着替えが一人でできました。」

・◎ 心に届く伝え方:「着替えが一人でできた時、〇〇さんはパッと顔を輝かせて私とハイタッチしてくれました。その誇らしげな姿に、私も胸が熱くなりました。」

2 「サンドイッチ法」で前向きな課題提示を

改善点や課題を伝える際は、ポジティブな内容で挟むことで、保護者の心理的負担を軽減し、前向きな協力体制を引き出します。

①  【肯定】 最近の頑張りや、素敵なエピソードから入る。

 ②  【課題】 「実は、今はここが踏ん張りどころで……」と具体的に相談する。

 ③  【展望】 「ここを一緒に支えていけば、さらに良くなりますね」と希望で締める。

3 「専門用語」を「日常の言葉」に翻訳する

私たちはつい「ADL」「スモールステップ」「視覚的構造化」といった言葉を使いがちですが、保護者にとっては馴染みが薄い場合もあります。

 例:「視覚的支援を行います」➡「パッと見て次は何をするか分かるように、写真カードを準備しますね」

 Point::相手と同じ景色が見える言葉選びを心掛けましょう。

4 「沈黙」を恐れず、聴く側に回る

教師が一生懸命話そうとするあまり、保護者が話すタイミングを逃してしまうことがあります。

・「お家ではいかがですか?」と問い掛けた後は、5秒間待ってみる。

・保護者の言葉を「〜と感じていらっしゃるのですね」と一度繰り返す(受容)。

 

結びに:私たちは「伴走者」です

保護者は、時に「自分の育て方が悪いのでは」と自分を責めてしまうこともあります。教師の役割は、正解を教える「指導者」である以上に、共に悩み、共に喜ぶ「伴走者」であること。

「先生に話してよかった」その一言が、お子様を支える大きな力になります。今一度、自分自身の言葉の「温度」を確かめてみましょう。

 #54 言葉一つで、授業の景色が変わる(令和8年5月7日)

特別支援学校の授業において、教師が発する「言葉」は、単なる指示ではありません。

それは、子どもたちの学びを支える「足場」であり、意図を持った「教材」でもあります。

同じ場面でも、「今日、この子に何を学んでほしいのか(ねらい)」によって、言葉掛けは180度変わります。その具体例をいくつかご紹介しますので、普段の授業や個別の指導計画作成の際に役立ててください。 


例1:着替え(シャツのボタンを留める場面)

 ◇ ねらいA:衣服を整える「手順」を定着させたい

  ・言葉掛け:「次は下から2番目だよ」「穴を見つけてごらん」

  ・解説:手順を視覚化・具体化し、成功体験を積み重ねることを優先します。

 ◇ ねらいB:手指の「巧緻性(器用さ)」を高めたい

  ・言葉掛け:(あえて言葉を減らし)「……(じっと見守る)……あ、つまめたね」

  ・解説:自分で試行錯誤する時間を確保するため、あえてヒントを最小限にし、自力で指先を使った瞬間を逃さず認めます。


例2:制作(のりを使って紙を貼る場面)

 ◇ ねらいC:のりの「適切な量」を知ってほしい

  ・言葉掛け:「アリさんの涙くらい、ちょんってつけてみようか」

  ・解説:「適量」という曖昧な概念を、子どもがイメージしやすい比喩に置き換えて伝えます。

 ◇ ねらいD:相手に「助けを求める(依頼)」力を育てたい

  ・言葉掛け:(のりを少し遠くに置いて)「……あれ?届かないね。どうする?」

  ・解説:困った状況をあえて作り出し、「手伝ってください」「のり、取ってください」と言い出せるきっかけを待ちます。


例3:体育(サーキット運動で平均台を渡る場面)

 ◇ ねらいE:身体の「バランス感覚」を養いたい

  ・言葉掛け:「おへそに力を入れて、前を見よう。そう、かっこいい!」

  ・解説:姿勢を維持するための身体感覚に意識が向くような言葉を選びます。

 ◇ ねらいF:「ルールや順番」を守る社会性を育てたい

  ・言葉掛け:「〇〇君が渡り終わったら、次はあなたの番だよ。……よし、スタート!」

  ・解説:動作の質よりも、他者との距離感や「待つ・交代する」という社会的な枠組みに焦点を当てます。 


私たちは「言葉のプロ」でありたい

このように、私たちは一つの動作に対して、常に「今のこの子には何が必要か」を問い続けています。何気ない言葉掛けを点検する機会としてください。

#53 個別の指導計画は『その子どもの自立と社会参加を促す』設計図(令和8年4月27日)

 より精度の高い設計図にするためのポイント

① 表記・レイアウトの基本

まず、計画の『顔』となる部分です。常用漢字の誤字、脱字、箇条書きの記号(○や・)、行揃えを整えましょう。

なぜか? 読み手(精査をする人が)がそこに引っかかってしまうと、中身を精査できなくなるからです。保護者や外部機関が見た時に『信頼できる計画だ』と思ってもらえるよう、最後の一読(校正)を徹底しましょう。

② ロジックの整合性

「次に、一番の肝となる部分です。『目標』『手立て』『評価』が一本の線でつながっていますか?

●     目標:何ができるようになるか

●     手立て:そのために先生が何をするか

●     評価:目標が達成できたかどうか 例えば、目標が『挨拶』なのに、評価が『授業に集中できた』では繋がっていません。ここがズレると、指導の軸がブレてしまいます。」

③ 個別性の担保

最後に、一番注意したい点です。実態が違う生徒に、同じ目標や手立て、評価を使い回していませんか?また、作業学習や美術などの製作(制作)場面で用いられている手順書(工程表)の活用は、個別の指導計画でもよく目にする言葉ですが、長いスパンで行われている学習にも関わらず、最初に提示した手順書から全く変化がなく、結局覚えるまで教師がぴったりいている状態になっていませんか?

似たような課題を持つ子どもでも、その背景や得意なことは一人ひとり違います。コピー&ペーストではなく、目の前のその子の顔を思い浮かべながら、その子だけの言葉で紡いでください。同様に、手掛かりは、身体的なガイドや、指さし、手順書、言葉掛けなどのステップがあります。その生徒の実態を的確に捉えた上で、目標や手立てを検討することが大切になります。

 

書き手が上達する、精査する人が楽になる、何よりも子どもへの指導の根拠となる個別の指導計画を作っていきましょう!#06や#12も合わせて御覧ください。

#52 「余白」がないと、いい仕事はできません。(令和8年4月20日)

 前例を疑う勇気は、「ワクワク」にもつながります。

●  「先生、疲れてない?」と子どもに気付かれないために

 子どもたちは、私たちの心の揺れを敏感に察知します。先生が疲弊して、目が吊り上がっていたら、どんなに良い教材も届きません。だから、今年度は「大人のウェルビーイング(幸せ)」を追求します。

●  AIは「敵」ではなく、事務作業を任せる「相棒」

 指導計画や文書の「0→1」作成に、ぜひAIを使ってください。分校では、個別の指導計画を作成する際に、AIの活用を試みています。空いた時間で子どもと笑い合い、早く帰って家族とご飯を食べてください。「前例踏襲」という名の重石は、勇気を持って「これ、いります?」と声を上げてください。

●  心理的安全性の高い職員室を

 失敗しても大丈夫。意見が違っても大丈夫。「ぼちぼちいこか」の精神で、お互いのプライベートや強みを認め合えるチームでありたい。教職員の「ワクワク」が、子どもたちの未来を照らす一番の光になります。

#51 「先生によって違う」を、終わらせる。(令和8年4月13日)

 行動マトリクスは、子どもと「私たち」を守るためのツール。

・アンケートの「本音」に向き合って

 昨年度末のアンケート、しっかり読み込みました。一番多かったのは「指導観のズレ」への悩みでした。「A先生には怒られたけど、B先生はいいって言った……」。これでは子どもがパニックになるのも無理はありません。

・ポジティブに行こう

 本年度から導入する「行動マトリクス」は、子どもを縛るためのルールではありません。「ここではこうすればOK」を共有し、先生方が自信を持って「いいね!」と言える環境を作るためのものです。

・「見える化」は愛です

 特に小学部のルーティンや、中学部・高等部の働くルール。写真やカードを使って「見通し」を子どもたちにプレゼントしてください。言葉で何度も叱るより、一枚の写真やイラストが子どもを安心させることがあります。「叱らなくていい教室」を一緒に作っていきませんか。

 本校では「相手の顔を見てあいさつしよう」「笑顔でペコリしよう」が始まりました。早速、丁寧にあいさつしてくれる児童生徒が増え、嬉しいです。「小さなできた!」の積み重ねが大切だと考えています。