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SEVEN☆RICE~ぼちぼちいこか

#25 家庭への般化を考える①(令和7年9月29日)

 知的障がいや自閉症のある方は、一般的にある場所で身に付けた知識や技能等を別の場所で発揮することが難しいことがあります。

 例えば、学校の係活動として洗濯物をたたむことに取り組んでいる子どもがいると思いますが、家庭に般化することのできる取組になっているでしょうか。

 私は教員時代、学校研究の一環として、全家庭に担任が訪問し、家庭で行えるお手伝いを指導することに取り組んだことがあります。

 その時驚いたのが(ある意味当然ですが)、「タオルをたたむこと」1つをとっても、端と端を合わせて文字通りタオルをたたむ家庭もあれば、1回たたんでタオルをまるめるなど、家庭ごとにその方法が異なるということです。

 学校で取り組んでいる方法を家庭に押し付けても、迷惑を掛けてしまうこともあります(実際に「このたたみ方は困る!」と怒られたこともあります)。

 学校での成果を家庭につなげるためには、懇談などの機会を通じて、あらかじめ家庭でのやり方や好みを聞いて指導を行うことが早道のように思います。

#24 教育活動を通して資質能力を育成する(令和7年9月25日)

 昨日の校内研究で話した内容です

今年度春の職員会議で中学部2年生が七飯中学校の体育大会に参加した映像を見てもらいました。そして、今は学校祭の参加に向けて取組を進めています。春と秋で何が違うか。

正直、体育大会の時は、体育で目標を立てて、出向きましたが交流することがメインとなっていました。しかし、学校祭に向けては、単元計画を作成するなど、教科のねらいを達成する共同学習へと変容しています。セブンライスにも記載しましたが、単元を見通した上で、どのような力を付けていくか、どのタイミングで映像を見合うなどの間接交流と学校祭本番の直接交流を行うか。中学校音楽との学びの連続性を意識するなど、交流及び共同学習を行うことを目的とせず、生徒の学びを促すための手段としていることが、今年度の中2学年団の大きな成果だと考えています。

先日中2の先生とこうした成果を共有した上で、ある先生に、音楽で単元を見通した指導ができたわけですから、例えば作業学習など他の授業でもできないの?といったやりとりをしましたが、今年度の重点のひとつに掲げている「根拠に基づいた授業づくり」を全ての学部、学級で目指してほしいと考えています。

 現中2の昨年度と今年度の取組を振り返ると、1年生の時は交流中心、2年生で共同学習中心で整理することができると思うが、じゃあこの成果をどうするか。

 具体的には

・中学部としてどうしていくのか、小学部や高等部はどうしていくのか。

⇒ 「つながり」や「つながる」、「ともに学ぶ」といったキーワードは次年度の学校経営の柱になる可能性があるとも考えています。

 是非、各学部や総務、教務等関係分掌で話題にしていただき、次年度の教育課程改善に向けた検討をお願いします。

  その際、布施先生の視察報告にもありましたが、高校も含めた町内の学校とビジョン(理念)を共有していくことが重要と考えています。8月に実施した合同研修会で教育大の杉本先生から、PBSの考え方を御教示いただくとともに、行動マトリクスについて提案いただきました。

 ビジョンを共有するに当たって、行動マトリクスは効果的なツールになり得ると思いますので、こうしたことについて、研究部を中心に校内研修でまとめ、発信していくことなどを期待しているところです。

 最後に、交流及び共同学習に限らず、あらゆる教育活動を行うことを目的にするのではなく、様々な活動や取組を通じて新たな価値を生み出す、新たな価値に基づき次のチャレンジをしていく、そんな好循環を学校全体で目指したいと考えていますので、引き続き先生方の主体的な取組をお願いします。

#23 MTとSTの役割を確認する×やりとり機会を創出する(令和7年9月22日)

 ティーム・ティーチングを少し工夫するだけで、子どもの成長を促すことができます。ここでは、#02と#14、#15に関連して説明します。

 体育で体操する場面や音楽で手遊びなどを指導する場面を観察していると、図右上のような指導体制で子どもの動きを引き出そうとしている様子を見掛けます。この場合、T2の先生がT1の先生と同じ動きをしていても、子どもからは見えないので全く効果がありません。右上で子どもの動作を促すのであれば、T2はT1への注目を促すことと、子どもが適切な動作が行えるよう、身体的プロンプト(介助ではなく、気付きを促す)を出すことなどが求められます。

 また、動作はまだぎこちないけれども、みんなの前に立って「お手本になりたい」というモチベーションの高い子どもがいる場合には、図中央のような指導体制でT3の先生がモデルを示して、C1に手掛かりを与えることが有効であり、子ども同士のやりとり機会にもつながります。

  さらに、全体指導でT1を注視することが難しい集団や、集中的に技能を高めたい場合には、図下のように複数の先生が前に出て、子どもの動きを引き出した方が活動のねらいに即した指導を行うことができます。

  普段何気なく行っているティーム・ティーチングは、とても深い指導方法です。今一度、学級や学年で打ち合わせるなど、チームで子どもたちの成長を促していきましょう。

#22 「質」と「量」を考える×MTとSTの役割を確認する(令和7年9月16日)

 七飯中学校学校祭の舞台で披露する中学部2年生の音楽(手話歌「翼をください」)の単元が始まりました。ここでは、#01と#02に関わる内容を中心に説明します。

 授業は、発声、音に合わせた動き、手話歌・・・と進むのですが、どの活動も活動量が十分に確保されていること、MTの全体への指示が明確で、発問や指示を出すときの声の強弱、テンポも工夫していました。また、STは生徒がMTに注目できるような働き掛けに徹していて集団の授業として理想の形となっていました。

 授業を行う上で大切なのは、集団全体に分かりやすい指示や手掛かりを行うこと、十分な学習量を保障することです。その上で個別の配慮を行い、活動の質を高めていくことが基本です。

 興味のある先生は中2学年団に相談の上、参観し、この授業の良さを体感してください。

 

 また、本実践のよいところは単元計画を定め、単元初期の授業は「知識・技能」が高まるよう、活動量を十分に確保しています。単元が進むにつれて「思考力・判断力・表現力等」に関わる指導を行うなど、単元をまとまりとして捉え、育成すべき資質・能力を生徒が身に付けられるよう学年の先生方が共通理解を図り、指導を行っていることです。手話歌「翼をください」の題材は毎回取り組んでいますが、授業ごとのねらいに応じて、指導内容が異なるので、生徒も生き生きと活動しています。

 

 その結果、音楽の楽しさを子どもが感じ、授業を重ねるうちに、大きな声で歌唱する生徒や歌に合わせて、大きな動作で手話をする生徒が増えるなど、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」が高まってきており、今後が楽しみです。

 

 好事例を参考にチームで専門性を高めていくことを期待しています!

 なお、個別の指導計画にかかわり、前期の評価や後期の目標を立てている時期だと思います。分校の湯谷教頭が研修で学んだ内容をまとめていますので参考にしてください。

#21 教材の使い方にもステップがある×やりとり機会を創出する(令和7年9月8日)

 プリント学習に取り組んでいる子どもはたくさんいると思いますが、ただ問題を解くことだけにとどまっていませんか。ここでは#05、#14、#15に関連する本校小学部6年生の取組を紹介します。

 当該児童は解が3桁になる足し算に取り組んでいます。1枚のプリントに16問の問題(横に4問、縦に4問)が準備されており、声に出しながら先生と確認しながら取り組んでいて、筆算の要領がつかめてきたところで、1列(4問)の解の中で、「一番大きい数字は?」「一番少ない数字は?」といった発問を行いました。機械的に計算ができる子どもはたくさんいますが、このように算数がもつ面白さ、数量の概念を常に確認しながら、課題に取り組むことは、金銭や買い物、時刻と時間の学習にもつながります。

 

 また、計算と数の大小概念を確認した後、声を出さずに計算することに取り組みました。頭の中で計算し、答えを出すことは一見簡単そうに見えて、実は難しいことです。当該児童は、求められていることをすぐに理解し、実行していました。その結果、声に出していたときと比べると、明らかに計算の速度が上がりました。「声に出さずに計算できる=頭の中で数を操作できている」ということですから、国語でも黙読できる可能性が高く読解や出来事を思い出しながら日記を書くことにも成長が期待できます。

  手続きをコロコロ変えると混乱する子どもは混乱しますが、手続きが定着したら、一つの教材で多様な関わり方を試し、子どもの可能性を探っていくことにチャレンジしてみてください。

#20 「楽しさ」を考える(令和7年9月1日)

 子どもに知識や技能を授けようとするときに、よく行われる方法として課題分析があります。例えば歯磨きをするときに、①歯ブラシに歯磨き粉を付ける。②歯ブラシを口の中に当てる。③うがいをする。などの手順で、「できているところ、できそうなところ、できていないところ」を評価し、指導を進める方法です。

 

 私は教員時代、子どもの余暇を研究している時があり、家庭でも楽しめるようにトランプを教えていました。筑波大学の野呂先生に「楽しさを課題分析してはどうか」と助言され、「どきっ!」としたことを今でも覚えています。

 

 当時「ババ抜き」をしていて、このゲームの楽しさは「数字をマッチングすること」と「ジョーカーを引かないこと」です。特に数字をマッチングすること(スキル)は、子どもたちも理解しやすく、すぐに覚えます。しかし、ジョーカーを引いてしまったときの感情や対応の仕方を教えることやジョーカーを引かなかった時のうれしさを子どもに教えることは、なかなか難しいです。そのため、配るトランプの枚数を少なくし、このことが起こりやすい状況をつくり、繰り返しの指導をしました。そうすると、絶対に勝ちたい(いわゆる1番病)の子どもも、ジョーカーを引く頻度が多いので、勝つことだけにこだわなくなったり、あまり感情を出さない子どももトランプを抜くときのドキドキ感を表情に出すようになったりするほか、休み時間に自発的にトランプを楽しむ様子が見られるようになりました。

 

 この時の学びを生かして、別の子どもたち(小学部中学年)には「自転車に乗ること」を教えました。自転車に乗る楽しさを「風を切る爽快感」と「バランスをとるハラハラ感」とし、最初に行ったのが、ペダルを外して、坂道を下ることです。「危ない」と思う人もいるかも知れませんが、危なさは子どもが一番分かっているので、転びそうになる前には、足をついて減速しますし、バランスが取れているときには、笑顔で風を切る爽快感を楽しんでいました。こうして楽しさを十分に味合わせてから、ペダルを漕ぐことも教えました(多分、ペダルこぎから教えたら、楽しくなかったと思います)。

 しばらくすると指導していた子ども全員が乗れるようになったので、グランドや校舎まわりを時間いっぱい走ったり、交通公園に入って信号を守ることや一時停止することなど交通ルールを指導しました。こうした様子を保護者にも実際に見てもらうことで、「家庭によっては見通しのよい道路で子どもとサイクリングに出かけた」という報告を受け、嬉しかったことを覚えています。

 

 夏休み、本校の高等部1年生生徒と先生方がチームを組んで、ティーボール大会に出場しました。分校では子どもたちの絵画や書道作品を「いさりび鉄道作品展」に出展しました。学校で行う活動には、楽しい要素がたくさん詰まっていると思います。「楽しさ」を課題分析して、子どもたちが「楽しさ」を感じられる活動をたくさん行ってほしいと考えています。

#19 行動上、課題のある生徒への対応を考える(令和7年8月25日)

※終業式の日に本校集会でお話した内容です。

 「個人攻撃の罠」という言葉をご存知だろうか。行動分析の言葉であるが、行動変容を求める手立てを行うのではなく、「家庭的に保護者が難しいから」や「あの子は変わらない」、「担任団が悪い」「協力を得るのが難しい」など、人のせいにして十分な手立てを施さないことを「個人攻撃の罠に陥る」という。

 本校には無縁かもしれないが、個人攻撃の罠に陥らないため、私の事例をもとに上げたい。14年間の教員生活の半分は行動上大変と言われる子どもを担任してきた。私の教員人生の価値観を変えたのは約25年前に知り合ったsさん。高等部の3年間を担任していた。IQの程度でいうと40程度ある自閉症を合わせ有する生徒であった。高1の終わり頃から、家庭で大変ということで登校がままならなくなった。

 学校に登校しても、トイレに長時間こもったり、特定の職員をみては、興奮したり、小学部など、小さい子どもの声に反応しては大きなトラブルに発展していた。体重が100キロある生徒であり、一度トラブルが起こると、モノは壊れ、人は怪我をする、気持ちも折れる、そんな毎日であった。どういった状況でトラブルが起きているかデータをとったところ、特に多かったのが、給食の時に特定の職員を見かけ追いかけ回すということであった。

 食べることが大好きなsさんであったが、データに基づき、私は担任として学部主事と管理職、保護者に給食を止めて、自炊すること、日課は集団とは別日課を原則とすることを提案し、了承を得た。基本的には別室対応で、1-1の指導を行い、例えば、うどんを作るとなれば、朝から小麦粉を踏み、生地を寝かす時間には課題学習を行ったり、軽作業を行った。教育課程上の位置付けは自立活動を中心とした。

  食費は保護者から月に1万円負担してもらった。この取組から学んだことは、活動で支えることです。知的障害と自閉症や発達障害を持つ子どもたちに私たちの正論をぶつけても、こちらが期待している行動をすることは難しい場合が多い。自然発生的に望ましい方向に行動変容することは、ほぼない。だとしたら、問題行動が起きにくい状況づくり、すなわち問題を起こすからこそ、具体的な活動で子どもの行動を支えることの大切さを学んだ事例です。

 この事例には続きがあって、月曜日から金曜日まで、担任である私がsさんを個別で見ることは他の生徒もいることから難しかった。そのため、学級付き、学部付きの先生が同じ取組を行うだけでなく、小さな子どもを不用意に近付けないなど、他学部の先生にも自分ごととして、協力をいただいた。

 具体的な方針のもと、子どもを行動で支えるうえで、チームで取り組むことの重要性を学んだ取り組みであった。こうした取組の結果、問題行動が激減し、卒業時期には問題行動も激減し、行事への参加や一部の授業には集団参加が可能な状態となり、進路も決定した。

 本校には、様々な背景を持つ子どもが在籍している。本校では年間約1,000時間の授業時数を配当し、指導を行っている。3年間で3,000時間、6年間で6,000時間、12年間で12,000時間である。この貴重な時間が「個人攻撃の罠に陥らないよう」また、本校の教育が次のステップに進むためには「学校が楽しい」と子どもが感じる授業づくりが重要になると考えている。

 教員時代の私が管理職や周囲の先生方に協力いただいたように、積極的なアプローチは特別日課も含め、校長として応援したい。これまでの指導を振り返っていただき、「子どものために、チームとして」必要に応じて2学期以降の実践を改善してほしい。

#18 教育課程企画特別部会の議論に触れる③(令和7年7月17日)

~特別支援教育に関わる小・中・高の課題~

 通常の学級、通級による指導、特別支援学級に関わる課題と方向性が議論されていますが、ここでは通級による指導について触れます。

 主な課題として

⚫現行の制度では、障害による困難の改善・克服を目的とした指導(自立活動)と通常の学級での授業で構成されており、通級による指導を利用している子供も含めて、通常の学級に在籍する障害のある子供たちは、障害のない子供と同一の目標や内容で各教科の学習に取り組むことが前提であり、通級による指導においては各教科について教育課程上の特例的な取扱いはできないなど、障害の状態等に応じたきめ細かな指導の実現に課題がある。

 

 方向性として

◇通級による指導において、障害の状態等を踏まえ、特に必要がある場合には、各教科の指導を行うことも可能とすることや、通級による指導の授業時数の上限を見直すことを検討してはどうか。

◇各教科の指導に当たっては、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したものに替えることや取り扱わないことなど、児童生徒の障害の状態等に応じた教育課程の編成を認めることを検討してはどうか。

◇通常の学級においても障害の状態等を踏まえ特に必要がある場合には、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したもに替えることや取り扱わないことなど、児童生徒の障がいの状態等に応じた教育課程の編成を認めることを検討してはどうか。

といった議論が行われています。

 

 一人一人の子どもの教育的ニーズに応じた「柔軟な教育課程」、「通常の学級と通級の行き来がより柔軟にできるよう学校長判断で決定できる仕組み」へと変わっていく可能性もあり、従来の障害の有無だけでなく、不登校や外国人児童生徒など多様性を包摂する仕組み(インクルーシブ)が加速することも考えられます。

 

興味のある方は

https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf

https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf

を参照してください。

 下線部は、特別支援学校で従来から行われている重複障害のある子どもの教育課程の考え方を参考にしているように思えます。

#17 教育課程企画特別部会の議論に触れる②(令和7年7月16日)

~特別支援学校の課題~

 顕著化している主なものとして、

⚫ 自立活動の時間の指導と各教科等の指導の関連付けが十分ではないとの指摘や、自立活動の実施にあたり、実態把握から指導目標・内容の設定までの考え方・プロセスに課題があるとの指摘もある。

 ⚫ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては、小・中・高等学校における学びとの連続性の確保を図りつつ、知的障害の特性や発達の段階等を踏まえた対応が必要。

 ⚫ 小・中・高との交流及び共同学習の機会が十分ではないとの指摘もある。

 ⚫ 特別支援学校においてもデジタル学習基盤の活用状況に課題がある。

 

 考えられる方向性として

 ◇ 自立活動について、各教科等との関連付けをこれまで以上に徹底し、自立活動の時間に加えて、学校の教育活動全体の取組となるよう、見直しを図る方向で検討してはどうか。  

 ◇ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては 、小・中・高の各教科に準じつつ、障害の特性や発達の段階等を踏まえた構造化を検討してはどうか。

 ◇ デジタル学習基盤の活用について、 検討しては障害の状態や特性等を踏まえた活用の在り方についても明らかにしてはどうか。

◇ 交流及び共同学習については、その意義として、障害のある子供と障害のない子供がともに協働的に学び合うことの重要性を示す方向で検討してはどうか。

 

 #12、#13とも関連する内容だと思います。詳しく知りたい方は以下のURLを参照してください。

https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf

 なお、交流及び共同学習に関する論点に本校と七飯中学校で実施している「インクルーシブな学校運営モデル事業」が取り上げられています。

#16 教育課程企画特別部会の議論に触れる①(令和7年7月15日)

~学習評価について~

 次期学習指導要領に向けて議論が活発化しています。

 現行の学習評価は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で目標に準拠した評価を行い、総括した評価が行われていますが、今、議論されているのは「知識・技能」「思考・判断・表現」で目標に準拠した評価を総括し、「学びに向かう力・人間性」を個人内評価とするものです。

 背景には「学びに向かう・・・」は評価の基準が教師によって異なる(発言回数や提出物、授業態度などを評価する)ことや、メタ認知といわれるものを評価することの難しさがあるようです。

 こうした考えに対し、「子どものやる気を評価しないのか」や「知識偏重に陥るのではないか」といった意見もあるようです。

 「学びに向かう・・・」を評価しないのではなく、むしろ変化の激しい社会において「学びに向かう・・・」は特に重要であり、個人内評価としつつも、「初発の思考や行動を起こす力、好奇心、学びの主体的な調整、他者との対話や協働、学びを方向付ける人間性など」は、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」の評価の過程でも見とれる場合があり、特に見とれた場合には、「思考力・判断力・表現力」の観点別評価に〇を付けるといった方法で議論が進んでいます。

 こうした議論に目を向けると、今後の教育課程編成や授業づくり、学習評価の参考になると思います。詳細は、以下のURLを参照してください。

https://www.mext.go.jp/content/20250711-mxt_kyoiku01-000043568_03.pdf

#15 やりとり機会を創出する②(令和7年7月14日)

 #14「やりとり機会を創出する①」で教師とのやりとりができそうになってきている場合は、段階的に子ども同士のやりとり機会を増やしていく必要があります。

 これまで教師が行っていた活動を子どもに移行していくことは、#03で触れた子どもの「待ち時間」を減らすことにもつながります。

 

 例えば、朝の会など授業の進行を子どもが担っている場面を見掛けますが、こうした活動はとても大事だと考えています。

 しかし、子どもの様子を見ていると、進行している子どもは原稿を読み上げるだけになっていたり、機械的な進行になっていたりする場合や、聞き手側の子どもは司会役の子どもを意識していない場合があります。

 

 ただ単に進行をしているだけでは、進行も上手にならないので、どこを見て話せばよいか、声の大きさはどの程度か、聞き手側の子どもが話を聞いていない場合の対応など、子どもの実態に応じて指導を行うことが大切になります。

 また、聞き手役の子どもについても同様に、進行役の子どもに注目して、反応できるよう指導を行うことが大切になります。

 

 障がいの状態や特性は一人一人異なるため、簡単には行きませんが、子ども同士のやりとりが進むと、先生が子どもに指示・説明する授業ではなく、子どもに気付かせるような働き掛けが増えるようになるなど、先生方の教え方が変わる事例をたくさん見てきました。

 子どものもつ能力や可能性を高めるためにも、やりとり機会を増やす取組に、ぜひチャレンジしてみてください!

#14 やりとり機会を創出する①(令和7年7月7日)

 #03「「準備」と「後片付け」を大切にする」とも関連しますが、普段の何気ない活動の中にも、やりとりの機会があります。

 例えば、個別指導の場面で、学習に使うプリント等を入れているA4のカゴを先生がとって準備をするのか、子どもが準備をするのかでやりとり機会の回数は変わってきます。

  また、せっかく後者の方法を用いていても、子どもが雑にカゴを取り扱っているようでは、学習(やりとり)効果も半減します。カゴを持つときに、正しい位置を持つことを教えることも大事なやりとりの機会になりますし、カゴを直接、机に置くことよりも、先生の声掛けに合わせ、先生を意識してカゴを手渡すことも大事なやりとりの機会です。

 

 さらに、#01「「質」と「量」を考える」とも関連しますが、次のような場面も貴重なやりとりの機会になります。

 個別指導の場面で、文字(単語)カードとイラストのマッチングを行っている場面を見掛けますが、ただ単にマッチングするだけでは学習機会が半減します。

 文字カードを手渡すときに発語を促したり、イラストが示す様子をジェスチャーで促したりするなどが考えられます。

  今一度、知的障がいのある子どもの学習上の特性はもとより、普段の何気ない活動を振り返り、子どもとやりとりする機会を大切にすることが重要と考えています。

#13 知的障がい特別支援学校の教諭の専門性=知的障がいのある子どもたちのための学  習指導要領を理解し、実践していること(令和7年7月2日)

※6月の本校職員会議でお話した内容です

・ 従前までの学習指導要領と異なり、現行の学習指導要領は小・中・高校との教育課程の 連続性が重視されていること。

・ 教科等の目標は小学部では3段階、中学部では2段階、高等部では2段階で示されてお り、学習指導要領に定められた目標に準拠した評価が求められていること

・ 単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫する必要 があること

などをしっかりと抑えておく必要があります。

 

 そのため、個別の指導計画を作成するに当たって、教科等の目標として読み取れないものや目標を具体的に示すことは重要ですが、限定的になっているものについては注意が必要です。

  また、本校では日常生活の指導、生活単元学習、作業学習を実施していますが、個別の指導計画の目標をみると、知識・技能に偏りが見られます(#06、07、08参照)。

 生活単元学習では目標意識や課題意識、課題解決への意欲を育む活動であることや、作業学習では活動の意義や価値に触れ、喜びや感性の成就感を得ることなど、学習指導要領の解説(小中はP31、高等部P33)に各教科等を合わせた指導の特徴と留意点が示されています。

 今年度の重点(グランドデザイン)にも「根拠に基づいた授業づくり」を位置付けています。是非この機会に学習指導要領の解説を見開き、御自身が書いた個別の指導計画の目標や日々の授業を検証し、今後の指導に役立ててほしいと考えています。 

#12 特別支援学校教諭の専門性=自立活動の指導を理解し、実践していること (令和7年7月1日)

※6月の本校職員会議でお話した内容です

 障がいのある子どもが育成を目指す資質能力を身に付ける上で、自立活動は土台となるものであること、子どもを主語とした領域であることを抑えていく必要があります。

・指導内容ありきではなく、子どもの実態に応じて具体的な指導内容を設定する必要があ ること。

・6区分27項目全てを教える必要はなく(項目によっては特定の障がいに種に特化して います)、必要な区分・項目を組み合わせて指導する必要があること

 などを熟知しておく必要があります。

 

 例えば、本校の児童生徒の個別の指導計画(自立活動)の目標を見ていると、「絵カードを使って教師に要求を伝える」といった目標があります。

 中心となる自立活動の区分・項目はコミュニケーションとなりがちですが、必ずしもそうならない場合があります。

 このときのポイントは「絵カードを使って要求を伝える」上での実態をしっかり捉えることです。

・「人への意識を高めたい」ということであれば人間関係の形成

・「要求と絵カードを一致させる」ということであれば環境の把握

・「初歩的なコミュニケーション」ということであれば、コミュニケーション

となります。

 

 このように一人一人の実態を丁寧に捉えたうえで指導を行うのが自立活動であり、「子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う」という特別支援教育の理念につながっています。

 

 なお、本校の児童生徒の自立活動の目標を見ると、コミュニケーションの項目を挙げているケースが多くありますが、自立活動の解説を読み込むと、コミュニケーションの項目は発達順に(1)~(5)が示されており、中でも(3)や(4)は視覚障がいや聴覚障がいの子どもがメインになっていることが分かります。

 

 今年度の重点(グランドデザイン)にも「根拠に基づいた授業づくり」を位置付けています。是非この機会に自立活動の解説を見開き、御自身が書いた個別の指導計画の目標を検証し、今後の指導に役立ててほしいと考えています。

 

#11 教材のもつ意味を考える②(令和7年6月30日)

 図工や美術の時間に「枠からはみ出さずに色を塗る」ことに取り組んでいる場面を見掛けます。この課題を達成するには、手指の巧緻性や認知面など、様々な条件が必要となりますが、枠をはみ出さずに色を塗れる子どもと、はみ出してしまう子どもでは、社会性の育ちに大きな違いがあります。

  同様に、課題学習等で行っている色と形のマトリクス課題。一般的な発達は①色の分別、②形の分別、③色と形の弁別と進みますが、③ができるようになると、2つの条件を理解していることになりますので、状況を見る力(社会性)育ってきているということになります。

 2つの例を示しましたが、こうした課題に取り組む上でも#05の指差し対応弁別は指示に従う(社会性を伸ばす)重要な課題です。

 社会性を伸ばしたい子どもはたくさんいると思いますが、年齢が低いうちに認知発達を促していくことが結果的には早道なのかもしれません。

 こうした日常の学習を通してアセスメントしていくことも大切だと考えています。

色と形のマトリクス

#10 教材のもつ意味を考える①(令和7年6月23日)

 先生との個別指導で、いわゆるジグソーパズルを行っている場面をよく見掛けます。先生が自作した教材で4ピースや6ピースなど、工夫されているものもあれば、20~30ピース程度ある市販のパズルを使っている場合もあります。

 ジグソーパズルは、完成したときの絵のイメージを、もてていなくても、ピースの形が分かれば完成させることができるという特徴があります。

 完成したときのイメージを、もてている子どもは、子どもなりに考えて、ピースをはめていきますが、そうでない子どもは#05の②で触れた対応弁別が困難な状態で、手当たり次第にピースを置いたり、端から順に置こうとしたりします。

 ジグソーパズルを使って認知を伸ばすのは経験上6ピース程度の教材を使い、子どもが、完成形をイメージしながら課題に取り組むことが大切と考えます(20~30ピースのものは一定時間集中して取り組む力は求められますが、認知を伸ばすことにはあまりつながらず、余暇として取り上げた方が良いのかもしれません)。

 6ピース程度のジグソーパズルができたら、どうするか。切片パズルに取り組むことが考えられます。

 ジグソーパズルは形を見て課題を遂行しますが、切片パズルは線と絵全体を見ながら課題を遂行しなければならず、ここにも発達的に大きな意味があります。

 6~8ピース程度の切片パズルが安定的にできるようになると、線(細部)を見極める力やイメージする力、概念が身に付いてきていますので、文字学習への発展が期待できます。

#09「見通し」は2とおりあります。②(令和7年6月18日)

 #8で「単元の見通し」について触れましたが、ある学校でのエピソードを紹介します。

 A校では高等部祭で販売するお皿づくりに励んでいました。生徒が私に学習内容を説明してくれたので、私は「そのお皿いくらで売るの?」と聞きました。すると、その生徒は「分からないので先生に聞いてくる」と言って先生のところへ行きました。戻ってくると、その生徒は私に「200円です」と教えてくれました。私はさらにその生徒に「それって高いの?安いの?」と聞きましたがその生徒は困っていました。さらに私の質問は続きます。「粘土1㎏の値段は?」粘土1㎏からお皿何枚作れるの?」「釉薬はいくらするの?」生徒が困ると思ってした質問のはずが、生徒の顔が輝き始めました。そして最後の質問は「最低賃金はいくらなの?」。すると、生徒はそれぞれに「安い」「高い」などと自分の意見を言い始めました(これらの質問は思い付きではなく、特別支援学校学習指導要領解説 知的障害者教科等編(下)P253,イ 工業の基礎に基づいています)。

 B校では秋晴れの日に作業学習で窓拭きをしていました。私が「今日は天気がいいので窓拭きもはかどるね」と生徒に言ったところ、その生徒からは、「天気が良すぎる日は窓拭きに適していません」と返ってきました。私は「どうして?」と聞くと、その生徒は「窓がすぐに乾くからです」と言いました。

 A校とB校との違いはどこにあるか。一言で言うと「教え方」です。皿をつくるという活動そのものしか教えていないA校(#04で触れた未学習、不足学習とも言えます)に対し、B校は活動がもつ本質的なことを丁寧に繰り返し教えた結果、生徒が体験や実感に基づいて表現できていると言えます。

 生徒のもつ能力や可能性を高めるには、先生方がチームになり、単元を見通した指導が効果的といえます。

#08 「見通し」は2とおりあります。①(令和7年6月16日)

① その活動の見通しです。

 例えば音楽の時間に、「はじめのあいさつ」「歌を3回歌う」「楽器を演奏」「終わりのあいさつ」というように、この時間の流れを示す見通しです。本校のみならず、各校でイラストや文字などを使って伝えています。

② 単元の見通しです。

 例えば、単元のはじめに「学習に取り組む必然性」や単元が終わったときに、「何ができるようになるか」を子ども自身が理解するための見通しです。

 ①は知的障がいや自閉症のある子どもへのエチケットとして、浸透していますが、①に終始すると、活動することが目的になり、評価をするときに困ります。

 ②はどうでしょう。①に比べるとハードルが高いように思います(本来身に付けるべき、教科等の内容を意識する必要がありそうです)。

 子どもの実態から単元の見通しを伝える難しさはあると思いますが、①に偏ってしまうと単元を見通す学習を経験しなかったり、不足したりする(#04参照)可能性もあります。

 繰り返しの学習を得意とする子どもが多く在籍しています。単元を見通して、どのような力を身に付けさせたいか、この授業で何をねらうのかを明確にした上で、子どもに丁寧に働き掛けていくことが大切と考えています。

#07 授業改善をどのように進めるか考える(令和7年6月9日)

 「授業改善」と聞いて、それぞれの先生がイメージする事柄はそれぞれに異なると思います。ティーム・ティーチングで指導することが多い特別支援学校では先生方のイメージを共有することから授業改善は始まります。

 授業改善は目的ではなく、手段であり、目指すべき方向性は学校教育目標を達成することにあります。学校教育目標では漠然としすぎていると感じる場合には、今年度の重点「チームで、より子どもたちのためになる・・・」や学部の目標、学級経営目標に基づき授業改善を行うことになります。

 次にどの授業を改善するかですが、1週間に1度しかない授業を改善することは成果も見えにくく、すごく難しいと思います。毎日行っている授業であれば週に5回改善を行うことができます。

 本校・分校とも総授業時数における「指導の形態」の割合を見ると、日常生活の指導が最も多いことが分かります。

 集団の指導であれば、朝の会や帰りの会ということになりますが、朝の会等はパターン化されている場合がほとんどで、授業改善の対象となっていないように感じることも少なくなく、もったいないと感じることがあります。

 朝の会等の構成を分析すると、学習の基盤となる資質・能力(言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力)が多く含まれています。

 こうした資質・能力と学校教育目標等をリンクさせながら授業改善を行い、他の指導形態の授業改善につなげていくことは、「教科等横断的な指導」につながるだけでなく、断片的に学ぶことが多い知的障がいのある子どもの学習上の特性に合致した指導と言えます。

 こうしたプロセスを共有した上で、これまで当たり前に行っていた授業をチームで見直して行くことが授業改善への第一歩なのかもしれません。

#06 個別の指導計画と教育課程を考える(令和7年6月5日)

 個別の指導計画は、個々の児童の実態に応じて 適切な指導を行うために学校で作成されるものです。

 教育課程は、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を児童生徒の心身の発達の状況に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画です。

 この2つをつなげて考えることがとても重要です。

 「個別の指導計画の教科等の目標を見て教育課程をイメージできるものになっているか、どうか」ということです。

 例えば、本校の小学部1年生は年間の総時数944時間を計画しており、日常生活の指導604時間、生活単元学習34時間などとなっています。さらに掘り下げると、日常生活の指導の604時間でどういった指導内容を取り上げているか、日生で取り上げる複数の指導内容の割合はどうなっているか、そしてそれらに基づき、個別の指導計画が作成されているかどうかがポイントになります。

 本校・分校とも2期制で目標を立て、評価をしていることから、半年間を見通した目標を立てることも大切になると思います。

 個別の指導計画を作成するときに、しっくりこない場合は、

・教科等の年間指導計画(配当時数や指導内容)が児童生徒の実態に合っていない

・個の実態を注視しすぎるあまり、学習指導要領で示されている教科等の目標や内容と乖離している

ことなどが考えられます。

 この時期に改めて、個別の指導計画や学部の教育課程(年間指導計画)を点検してみてください。