3 校内で実践するための「3つのステップ」
学校現場で機能的アセスメントを活用する際は、以下のステップで組織的に進めていきましょう。
1 事実のみを客観的に記録する:まずは1〜2週間。
「わがままを言った」「サボろうとした」といった教師の主観(感情・解釈)は交えず、「プリントが配られた(A)」「机に突っ伏した(B)」「休み時間までそのまま過ごした(C)」のように、目に見える事実だけをABCの枠組みで記録します。
2 ケース会議で「機能」を仮説立てる
学年主任やコーディネーター、学部主事等と「この子は課題が難しくて逃げたかった(逃避の機能)のではないか」と行動の目的を推測します。背景にある特性(見通しが持てない、感覚過敏など)も考慮します。
3 「適切な代替行動」を教える
行動マトリクス(PBSの考え方)などを用いて「大声を出すのをやめなさい」と禁止するのではなく、同じ機能を満たす適切な方法を教えます。例えば、逃避が目的なら「『手伝ってください』のカードを出す」、あるいは「『1分休憩します』と伝える」といった代替行動を練習させ、それができたら徹底的に褒め、要求を叶えます。
私たち特別支援教育の専門家は「困った行動をする子」ではなく「今、本人が一番困っている子」と捉えることが基本です。子どもは自分の気持ちを言葉でうまく伝えられない代わりに、行動でSOSを出しています。
機能的アセスメントの最大のメリットは、教師側が「この子はわざと困らせているわけではない。環境や関わり方に原因があるんだ」と冷静に、前向きに捉えられるようになることです。
担任一人で抱え込む必要はありません。組織で取り組んで行きましょう!
授業中や集団行動の中で「大声を出す」「教室を飛び出す」「パニックになる」といった、対応に苦慮する行動(いわゆる行動障害や課題のある行動)に出会うことがあります。
こうした行動に直面したとき、私たちはつい「どうやって止めさせるか」という対処に目が向きがちです。しかし、子どもたちの支援において大切なのは、行動を力尽くで抑え込むことではなく、「その行動が持つ『意味(機能)』を理解すること」です。
今回は、そのためのツールである「機能的アセスメント(Functional Assessment)」について共有します。
1 機能的アセスメントとは?
機能的アセスメントとは、子どもが特定の行動を起こす「原因(きかっけ)」と、その行動によって得ている「結果(メリット)」を客観的に分析し、その行動が果たしている「機能(目的)」を知る手法です。
応用行動分析の視点に基づき、行動を単発の現象ではなく、以下の「ABC」という3つの要素のつながり(三項随伴性)で捉えます。
・A(Antecedent:先行条件):行動の直前に何があったか(場所、人、指示、環境など)
・B(Behavior:行動):子どもが実際に取った具体的な行動(大声を出す、叩くなど)
・C(Consequence:結果):行動した後に、環境や周囲の反応がどう変化したか
2 不適切な行動が持つ「4つの機能」
子どもたちが起こす行動の目的(機能)は、大きく次の4つのいずれかに分類できると言われています。
| 機能(目的) | 具体的な状態の例 |
| ① 要求・獲得 | 好きなおもちゃが欲しい、注目を浴びたい、褒められたい |
| ② 逃避・回避 | 苦手な課題から逃れたい、うるさい教室から離れたい、休憩したい |
| ③自己刺激(感覚) | 手をひらひらさせる、体を揺らすなど、その行動自体が気持ちいい |
| ④ 嫌悪刺激の除去 | 体調不良(頭痛や腹痛)や、着ている服のチクチク感から逃れたい |
例えば、「授業中に大声を出す(B)」という行動があったとします。
・それが「先生にこっちを向いてほしいから(①注目獲得)」なのか、
・「今の課題が難しくてやりたくないから(②逃避)」なのか、
機能によって、私たちが取るべき支援(アプローチ)は180度変わります。
分校のある先生と児童の関わりを紹介します。4月当初、いわゆる汚言の多い児童でしたが、その機能は教師の注目を獲得するものが多いと判断し、視覚的に適切な関わり方を示しつつ、好ましい行動ができたときに称賛する(注目が獲得)できる取組を継続しています。今では、奇麗な言葉、気持ちのよい言葉が増えてきています!
普段、子どもがスクールバスを利用していたり、仕事などで学校行事への参加が難しかったりするなど、日頃なかなか直接お会いする機会が少ない保護者がいます。「顔が見えないと、こちらの思いが伝わっているか不安になる」と感じることもあるかもしれません。
しかし、「会えない=学校に関心がない」ではありません。仕事や家庭の事情で来校できなくても、我が子を思う気持ちは共通です。
むしろ、滅多に会えないからこそ、たまに会えた時の「印象」が大切になります。
接点が少ない保護者の方から「この先生なら安心だ」と信頼を寄せていただくための、3つのアプローチを共有します。
1 「文字」を味方につける 〜日常の小さなプラスの共有〜
顔を合わせられないからこそ、連絡帳やプリントなどの「文字」が強力な架け橋になります。
・「事実+褒め言葉」を連絡帳に
提出物などの連絡事項だけでなく、「今日、〇〇さんが友達を助けてくれました」「係の仕事を最後までやり遂げてくれました」といった具体的なプラスの姿を、ほんの2~3行書き添えてみてください。
2 「電話」のハードルを下げる 〜「事件・事故」が起きる前にかける〜
保護者への電話が「トラブルや怪我の報告」だけになってしまうと、着信画面を見ただけで保護者は身構えてしまいます。
・「1分間のハッピーテル」のすすめ
何事もない平和な時にこそ、電話をかけてみましょう。
「いつもお忙しい中、提出物等にご協力いただきありがとうございます。最近、〇〇さんが授業中とても良い表情で挙手してくれるので、嬉しくなって電話してしまいました。お家での様子はいかがですか?」
これだけで、保護者の警戒心は解け、強力なファンになってくれます。
3 「たまの出会い」を最高の瞬間に 〜個人面談や行事での演出〜
年に数回の個人面談や、学校行事など、数少ないリアルな接点は最大のチャンスです。
・ウェルカムの姿勢を全身で表す
「いつもお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます」という感謝の先制パンチ。「やっとお会いできて嬉しいです!」という笑顔とアイコンタクト。
・「私、あなたのお子さんをしっかり見ています」を証明する
お目にかかれたとき、まずはその子の「最近の具体的な良いエピソード」から話を始めます。これにより、「この先生はうちの子をよく見てくれている」という安心感が生まれます。
保護者との信頼関係は、劇的な大イベントで生まれるものではありません。日頃の丁寧な言葉遣い、提出物への一言コメント、電話での明るい声といった「小さな丁寧さの積み重ね」によって作られます。
「いつもお会いできないからこそ、お伝えしたいことがあります」そんな温かい姿勢で、普段お目にかかる機会の少ない保護者とも、つながっていきましょう。
私たちが日々の教育活動の中で、時に混同しやすい、あるいはその境界線に悩むことがある「人権尊重」と「障がい特性に応じた指導(合理的配慮・個別の指導)」の「違い」と「つながり」について、共有します。
一言で言えば、これらは対立するものではなく、「人権尊重という土台の上に、障がい特性に応じた指導が成り立つ」という関係にあります。
〔2つの概念の違いと関係性〕
この2つを明確に区別し、適切に組み合わせることで、子どもたちの「生きづらさ」を解消することができます。
| 項目 | 人権尊重 | 障がい特性に応じた指導(合理的配慮など) |
| 基本的なスタンス | 全ての児童生徒を「一人の尊い人間」として一律に大切にすること。 | 障がいや特性という「個別の違い」に焦点を当てて、具体的に対応すること。 |
| 目指すもの | 差別や偏見をなくし、誰もが傷つけられない安心・安全な環境をつくる。 | 学びや生活の「障壁(バリア)」を取り除き、教育の機会均等と自己実現を保障する。 |
| 具体的なアプローチ |
・言葉遣いや態度の尊重 ・プライバシーの保護 ・意見を聴く姿勢 |
・視覚的なスケジュール提示 ・感覚過敏への環境調整(イヤーマフ等) ・ICT機器の活用、課題量の調整 |
| イメージ | 全員に同じ「安心の土台」を用意する。 | 階段を登るのが難しい子に「スロープ(補助)」を用意する。 |
〔なぜ、この違いを意識する必要があるのか?〕
1 「人権尊重」だけで終わらせない
「私はどの子も差別せず、平等に優しく接しています」という姿勢は素晴らしいものです。しかし、言語理解の難しい子や聴覚過敏のある子に「大きな声で指導したり、指示の多い授業では、その子どもの「分かる・見通せる」環境にはなりません。
人権を尊重しているからこそ、その子の困っていることに気付き、具体的な環境調整や指導法の工夫(=特性に応じた指導)へ進む必要があります。
2 「特性に応じた指導」を特別扱い(特権)にしない
他の児童生徒から「なぜ〇〇君だけ△△を使っていいの?」「ずるい」という声が上がることがあります。
ここで重要なのが、「必要な配慮を行うことは、その子の学ぶ権利を守るための『人権尊重』の行動であり、ずるいことではない」という共通理解です。特別扱いではなく、スタートラインを揃えるためのプロセスであることを、教職員間や保護者、児童生徒に丁寧に伝えていきましょう。
先生方に意識していただきたいのは、「その指導や配慮は、子どもの自立と尊厳につながっているか」という視点です。
特性に応じた指導は、大人が先回りして全てを助けることではありません。子ども自身が「自分はこういう工夫があればできるんだ」と自信を持ち、自分の特性と付き合っていく力を育むことを目指します。これこそが、「20年後の姿」や「自分の明日をデザインすること」につながる、子どもの「人権」を最も尊重した教育的なかかわりです。
悩んだときは、一人で抱え込まず、学年主任、学部主事、コーディネーター、そして管理職も巻き込んで、組織で最善のステップを考えていきましょう。
子どもたちの可能性を広げるため、「子どもを真ん中に」これからも一緒に丁寧な実践を積み重ねていきましょう。
1学期も後半に入り、子どもの良い面だけでなく、学習や生活面での「課題」も見え始めてくる時期ではないでしょうか。
「何度言っても身支度をしない」 「授業中の私語が止まらない」 「ルールを守れない」
そんな子どもを前に、指導の難しさを感じ、時には焦りや苛立ちを覚えてしまうこともあるかもしれません。そんなとき、ぜひ試していただきたいのが、行動分析学の理論である「シェイピング(行動形成)」というアプローチです。
シェイピングとは・・・。
一言で言えば、「最終目標を一気に求めず、階段を一段ずつ登るように、スモールステップで目標に近づけていく方法」です。
私たちは無意識のうちに、子どもに「完璧な状態」を求めてしまいがちです。しかし、それができない子どもに対して「なぜできないんだ」と叱責しても、行動は改善しません。それどころか、生徒の自己肯定感を下げ、反発を生む原因にもなります。
シェイピングでは、目標を細かく分解し、「少しでも、目標に近づく行動ができたら、その場で認めて褒める」というステップを繰り返します。
〔学校現場での具体例〕
【例1:身支度をしない子ども】
・×NGな対応:「エプロンや連絡帳を所定の位置に置くまで、そのことをやらせ続ける」
・〇 シェイピング: 1. まず「カバンを開けたこと」を褒める。 2. 次は「連絡帳を出せた(持った)こと」を褒める。 3. 最終的に「身支度」へ繋げる。
【例2:授業中に立ち歩いてしまう生徒】
・ × NGな対応:「授業中、1回も席を立つな」と厳しく接する。
・ 〇 シェイピング:①最初の5分間、席に座っていられたら「よく集中しているね」と声を掛ける(認める)。②次の10分、その次は15分……と、徐々に基準を伸ばしていく。
〔3つのポイント〕
1 初期設定は「低すぎる」くらいでいい
スタートのハードルは、その子どもが「確実にできるレベル」まで下げてください。
2 「できた瞬間」にフィードバックする
時間が経ってからでは効果が薄れます。その場での一言、あるいはすれ違いざまの「さっきの良かったよ」が、子どもの次の行動を引き出します。
3 ステップを戻すのは「指導の失敗」ではない
次のステップに進んで失敗したら、基準が高すぎたということです。また一つ前のステップに戻れば良いだけです。焦る必要はありません。
子どもの行動を変えるのは、感情的な叱責ではなく、「適切なステップのデザイン」と「ポジティブな関わり」です。
先生方の心の余裕が、生徒の確実な変容を生み出します。ぜひ、日々の学級経営や教科指導のヒントにしてみてください。
〜アンガーマネジメントのすすめ〜
特別支援学校の毎日は、予測不可能な出来事の連続です。子どもたちのパニックや、意思疎通がうまくいかないもどかしさに直面したとき、私たちも人間ですから、「イラッ」としたり、感情が揺さぶられたりするのはごく自然なことです。決して「怒ってはいけない」わけではありません。
大切なのは、その湧き上がった怒りの感情とどう付き合い、どうコントロールするか(アンガーマネジメント)です。私たちの笑顔と子どもたちの安心を守るための、簡単な3つのステップをご紹介します。
1 怒りのピークは「最初の6秒」:まずは深呼吸
脳が強い怒りを感じてから、理性が働き始めるまでに約6秒かかると言われています。この6秒を衝動的な言葉や行動で返してしまうと、子どもを傷つけたり、関係性をこじらせたりする原因になります。
〇 実践:「あ、今イラッとしたな」と思ったら、心の中で数を数えるか、ゆっくりと深呼吸をしてください。相手(子ども)から少しだけ物理的に目線を外すのも効果的です。
2 「〜すべき」のハードルを下げる
私たちの怒りの背景には、往々にして「〜すべき」「〜するのが当たり前」という強い思い込みがあります。
・「静かに着席すべき」
・「言われた通りに行動すべき」
本校の先生方は、十分ご承知の通り、子どもたちにはそれぞれの特性や、その日の体調、環境による理由があります。「〜すべき」を「〜だといいな」「まあ、そんな時もあるか」に少し緩めてみるだけで、心のトゲが丸くなります。
3 私たちの「心のコップ」を満たす
水がなみなみと入ったコップは、少しの振動で溢れてしまいます。教職員自身の心に余裕がないと、子どもの小さな行動にも過剰に反応してしまいがちです。
〇 実践:勤務時間が終わったらしっかり休む、同僚と「今日こんなことがあってね」と抱え込まずに話す(吐き出す)、自分の好きな時間を5分でも作る。先生方自身のケアこそが、最良の専門教育の土台です。
先生方が心身ともに健康で、笑顔でいること。それ自体が、子どもたちにとって最も安心できる環境になります。一人で抱え込まず、チームで補い合っていきましょう。#38~#45も参考にしてください。
自分の不機嫌な態度(ため息、乱暴な物の扱い、無言の圧迫感など)を周囲にまき散らし、他者に過度な気遣いや精神的苦痛を与える行為をフキハラ(不機嫌ハラスメント)といいます。
多くの場合、本人は「忙しくて心の余裕がないだけ」と無自覚なのが特徴です。
多忙を極める学校現場では、つい感情が態度に出てしまいがちです。しかし、職員室がピリピリした空気に包まれると、以下のような弊害が生まれます。
〇 報・連・相の遅れ:「今、話しかけたらまずいかな…」という躊躇が、重大なトラブルの共有遅れに繋がります。
〇 同僚性の低下:互いに顔色を窺い合うようになり、チームでの協力など、組織的対応が難しくなります。
〇 生徒への伝染: 先生方のストレスや緊張感は、子どもたちにも敏感に伝わります。
「自分の機嫌は自分で取る」ための3つの意識
教員も人間ですから、イライラや疲れを感じるのは当然です。大切なのは、それを「周囲にまき散らさない」というプロ意識です。
1 自分の状態に気づく:「今、自分はピリピリしているな」と自覚する。
2 一呼吸置く:感情的に反応しそうな時は、深呼吸や水分補給で「間」を作る。
3 言葉で伝える:余裕がない時は態度で示さず、「今ちょっと手が離せないので、15分後でもいい?」と言葉で伝える。
先生方が安心して笑顔で働ける職場であってこそ、子どもたちに良い教育を還元できます。互いに声をかけ合い、風通しの良い職員室を一緒につくっていきましょう。
#38~#45も参考にしてください。
~「働き方改革」を通じた質の高い教育活動の実現に向けて~道内編
今、他校でも「先生の持ち時間をどう生み出すか」という工夫が次々と始まっています。「これは助かるかも」と思える、具体的な事例をいくつか紹介します。
1 「手作業」を「システム」に任せる
事務的な負担を減らし、子どもと向き合う時間を1分でも増やす工夫です。
・「書く」負担を減らす:指導計画の作成をゼロから書くのではなく、よく使う文言を「プルダウン」で選べるようにシステム化し、作成時間を短縮。
・「探す・共有する」を楽に:会議資料など様々な書類をデータ化。PCでいつでも確認でき、重い紙の束を持ち歩く必要をなくす。
・ 「即時レスポンス」で解決:本校でも実施していますが、チャットツールを使い、ちょっとした相談や報告をその場で完結。会議のために集まる時間を減らしています。
2 「役割」を整理して、授業に集中する
「あれもこれも」ではなく、役割を絞ることで心のゆとりを生み出しています。
・ 思い切った分業制:「担任は作業学習に参加しない」というルールを決め、その時間を授業準備や記録に充てる体制を整えた学校があります。
・ 事務ルートの「ショートカット」:決裁のルートや、外部からの依頼を受けるルールを管理職が整理し、先生方の手間をカットしています。
3 一人で抱え込まず「チーム」で守る
一番の負担軽減は、困ったときに「助けて」と言える環境です。
・ 「得意」を貸し借りする:「得意なことリスト」を共有し、ICTが苦手なら得意な先生に、教材作りが苦手なら得意な先生に、互いに頼り合える空気を作っています。
ある書籍によると、「働き方改革=職場での勤務の仕方」というイメージが強いのですが、御自身の睡眠時間や余暇時間から逆算するという考え方が示されていました。個人差はありますが理想とされる平均7時間の快適な睡眠を取るためには、何時に帰宅して、就寝、起床するか、好きな余暇の時間を確保するために、何時に退勤するか。自身で働き方をコントロールすることが、「教職員の心の余裕→児童生徒の笑顔につながる」という考え方です。是非、参考にしてください。
~「働き方改革」を通じた質の高い教育活動の実現に向けて~道外編
1 「会議」のあり方を見直し、スピード感のある校内運営を
会議は情報共有のために重要ですが、長時間の会議は教材研究や児童生徒への授業準備の時間を圧迫します。そこで、以下のルールを徹底している学校があります。
〇 「説明」から「質問」へのシフト
伝達事項は事前に資料を作成・共有します。担当者が事前準備を行い、会議参加者60人への説明時間を5分ずつ短縮することで、全体で300分の削減につなげています。
〇 会議の冒頭10分を「読解タイム」に
開始直後に資料に目を通し、会議は「質問」からスタートしています。これにより、説明の重複を省き、定時終了を徹底しています。
〇 情報格差の解消
時差勤務等で出席できない職員も、資料を読み込むことで出席者と同じ情報を得られる体制を整えています。
2 メリハリのある勤務スタイルの確立
「だらだらと残らない」意識を醸成するため、視覚・聴覚に働きかける工夫を行っている学校があります。
〇 マイ定時退庁日と「完全定時退庁日(金曜日)」
個々の業務状況に合わせた「マイ定時」の設定に加え、金曜日は一斉に定時退勤を促している学校があります。週末のリフレッシュを充実させることで、月曜日からの活力へとつなげているそうです。
〇 環境と音での切り替え
19時にはPCからBGMを自動で流し、退勤を促している学校があります。また、「クリーンデスク」を徹底し、退勤時はPCを閉じるだけで済むよう、日頃から整理整頓を徹底しているそうです。
〇 相談しやすい体制づくり
「働き方改革推進担当」を明確にし、教職員が業務量や進め方について気軽に相談できる環境を作っている学校があります。
3 「チーム学校」としての業務平準化
誰か一人が業務を抱え込むことがないよう、役割の可視化を進めています。
〇 「実行プラン」と「ミッション」の共有
「誰が・何を・いつまでに」行うかを全校で可視化している学校があります。
〇 ミドルリーダーの活躍
担当教諭が明確なミッションを持つことで、チームでの業務分担(平準化)が進み、「ライン管理(適切な進捗管理)」による効率的な運営が可能になっている学校があります。
働き方改革の目的は、単に労働時間を短縮することではありません。無駄を省いて生み出された「時間」と「心のゆとり」を、子供一人一人へのきめ細やかな支援や、質の高い授業準備に還元することです。
これからも、教職員が一丸となって、より良い学校環境づくりに邁進したいと考えています。紹介した事例を参考に学部や分掌単位で実施し、効果が出た際には業務可視化シートに記入するなど、情報提供をお願いします。
※内田洋行教育総合研究所の「学びの場.com」には、授業で使えるツールが掲載されていますので、参考にしてください。
https://www.manabinoba.com/yakudatsu/
昨年度、いくつかの場面で「ホワイトボードミーティング®」という手法を取り入れました。また、ケース会議では毎回のようにホワイトボードを使用しています。
なぜ、会議にホワイトボードが必要なのか?
これまでの会議は、資料を読み上げ、決まったことを確認する「伝達型」が多く見られます。伝達型の会議にもメリットはありますが、ホワイトボードを使い可視化することで、次のようなメリットがあります。
◇ 意見の「空中戦」を防ぐ
発言がその場で書き出されるため、「さっき誰が何を言ったか」が明確になります。意見が対立しても、ボード上で比較検討できるため、感情的な対立にならず、建設的な議論が進みます。
◇ 若手からベテランまで「全員参加」
ボードを囲んで輪になることで、役職に関わらず誰もが意見を出しやすい雰囲気が生まれます。一人ひとりの経験やアイデアが可視化され、学校全体の財産になります。
◇ 「納得感」のある意思決定
結論に至るまでのプロセスがすべてボードに残るため、参加した先生たちの満足度や実行力が高まります。
教育課題が多様化する現代、必要なのは「みんなの知恵を出し合うこと」です。全ての教職員が学校経営に主体的に参加する上で、場面やねらいに応じて、会議のスタイルを工夫していく必要があると感じています。
〜響き合うパートナーシップを目指して〜
保護者との懇談は、私たちが日頃の指導の成果を伝えるだけでなく、保護者の皆様の「願い」や「迷い」を丁寧に受け止める大切な機会です。より良い連携のために、以下の4つのポイントを意識してみましょう。
1 「事実」に「感情の彩り」を添えて伝える
単に「〜ができました」という報告だけで終わらせず、その時のお子様の表情や、教師がどう感じたかをセットで伝えます。
・△ 無機質な報告:「今日は着替えが一人でできました。」
・◎ 心に届く伝え方:「着替えが一人でできた時、〇〇さんはパッと顔を輝かせて私とハイタッチしてくれました。その誇らしげな姿に、私も胸が熱くなりました。」
2 「サンドイッチ法」で前向きな課題提示を
改善点や課題を伝える際は、ポジティブな内容で挟むことで、保護者の心理的負担を軽減し、前向きな協力体制を引き出します。
① 【肯定】 最近の頑張りや、素敵なエピソードから入る。
② 【課題】 「実は、今はここが踏ん張りどころで……」と具体的に相談する。
③ 【展望】 「ここを一緒に支えていけば、さらに良くなりますね」と希望で締める。
3 「専門用語」を「日常の言葉」に翻訳する
私たちはつい「ADL」「スモールステップ」「視覚的構造化」といった言葉を使いがちですが、保護者にとっては馴染みが薄い場合もあります。
例:「視覚的支援を行います」➡「パッと見て次は何をするか分かるように、写真カードを準備しますね」
Point::相手と同じ景色が見える言葉選びを心掛けましょう。
4 「沈黙」を恐れず、聴く側に回る
教師が一生懸命話そうとするあまり、保護者が話すタイミングを逃してしまうことがあります。
・「お家ではいかがですか?」と問い掛けた後は、5秒間待ってみる。
・保護者の言葉を「〜と感じていらっしゃるのですね」と一度繰り返す(受容)。
結びに:私たちは「伴走者」です
保護者は、時に「自分の育て方が悪いのでは」と自分を責めてしまうこともあります。教師の役割は、正解を教える「指導者」である以上に、共に悩み、共に喜ぶ「伴走者」であること。
「先生に話してよかった」その一言が、お子様を支える大きな力になります。今一度、自分自身の言葉の「温度」を確かめてみましょう。
特別支援学校の授業において、教師が発する「言葉」は、単なる指示ではありません。
それは、子どもたちの学びを支える「足場」であり、意図を持った「教材」でもあります。
同じ場面でも、「今日、この子に何を学んでほしいのか(ねらい)」によって、言葉掛けは180度変わります。その具体例をいくつかご紹介しますので、普段の授業や個別の指導計画作成の際に役立ててください。
例1:着替え(シャツのボタンを留める場面)
◇ ねらいA:衣服を整える「手順」を定着させたい
・言葉掛け:「次は下から2番目だよ」「穴を見つけてごらん」
・解説:手順を視覚化・具体化し、成功体験を積み重ねることを優先します。
◇ ねらいB:手指の「巧緻性(器用さ)」を高めたい
・言葉掛け:(あえて言葉を減らし)「……(じっと見守る)……あ、つまめたね」
・解説:自分で試行錯誤する時間を確保するため、あえてヒントを最小限にし、自力で指先を使った瞬間を逃さず認めます。
例2:制作(のりを使って紙を貼る場面)
◇ ねらいC:のりの「適切な量」を知ってほしい
・言葉掛け:「アリさんの涙くらい、ちょんってつけてみようか」
・解説:「適量」という曖昧な概念を、子どもがイメージしやすい比喩に置き換えて伝えます。
◇ ねらいD:相手に「助けを求める(依頼)」力を育てたい
・言葉掛け:(のりを少し遠くに置いて)「……あれ?届かないね。どうする?」
・解説:困った状況をあえて作り出し、「手伝ってください」「のり、取ってください」と言い出せるきっかけを待ちます。
例3:体育(サーキット運動で平均台を渡る場面)
◇ ねらいE:身体の「バランス感覚」を養いたい
・言葉掛け:「おへそに力を入れて、前を見よう。そう、かっこいい!」
・解説:姿勢を維持するための身体感覚に意識が向くような言葉を選びます。
◇ ねらいF:「ルールや順番」を守る社会性を育てたい
・言葉掛け:「〇〇君が渡り終わったら、次はあなたの番だよ。……よし、スタート!」
・解説:動作の質よりも、他者との距離感や「待つ・交代する」という社会的な枠組みに焦点を当てます。
私たちは「言葉のプロ」でありたい
このように、私たちは一つの動作に対して、常に「今のこの子には何が必要か」を問い続けています。何気ない言葉掛けを点検する機会としてください。
より精度の高い設計図にするためのポイント
① 表記・レイアウトの基本
まず、計画の『顔』となる部分です。常用漢字の誤字、脱字、箇条書きの記号(○や・)、行揃えを整えましょう。
なぜか? 読み手(精査をする人が)がそこに引っかかってしまうと、中身を精査できなくなるからです。保護者や外部機関が見た時に『信頼できる計画だ』と思ってもらえるよう、最後の一読(校正)を徹底しましょう。
② ロジックの整合性
「次に、一番の肝となる部分です。『目標』『手立て』『評価』が一本の線でつながっていますか?
● 目標:何ができるようになるか
● 手立て:そのために先生が何をするか
● 評価:目標が達成できたかどうか 例えば、目標が『挨拶』なのに、評価が『授業に集中できた』では繋がっていません。ここがズレると、指導の軸がブレてしまいます。」
③ 個別性の担保
最後に、一番注意したい点です。実態が違う生徒に、同じ目標や手立て、評価を使い回していませんか?また、作業学習や美術などの製作(制作)場面で用いられている手順書(工程表)の活用は、個別の指導計画でもよく目にする言葉ですが、長いスパンで行われている学習にも関わらず、最初に提示した手順書から全く変化がなく、結局覚えるまで教師がぴったりいている状態になっていませんか?
似たような課題を持つ子どもでも、その背景や得意なことは一人ひとり違います。コピー&ペーストではなく、目の前のその子の顔を思い浮かべながら、その子だけの言葉で紡いでください。同様に、手掛かりは、身体的なガイドや、指さし、手順書、言葉掛けなどのステップがあります。その生徒の実態を的確に捉えた上で、目標や手立てを検討することが大切になります。
書き手が上達する、精査する人が楽になる、何よりも子どもへの指導の根拠となる個別の指導計画を作っていきましょう!#06や#12も合わせて御覧ください。
前例を疑う勇気は、「ワクワク」にもつながります。
● 「先生、疲れてない?」と子どもに気付かれないために
子どもたちは、私たちの心の揺れを敏感に察知します。先生が疲弊して、目が吊り上がっていたら、どんなに良い教材も届きません。だから、今年度は「大人のウェルビーイング(幸せ)」を追求します。
● AIは「敵」ではなく、事務作業を任せる「相棒」
指導計画や文書の「0→1」作成に、ぜひAIを使ってください。分校では、個別の指導計画を作成する際に、AIの活用を試みています。空いた時間で子どもと笑い合い、早く帰って家族とご飯を食べてください。「前例踏襲」という名の重石は、勇気を持って「これ、いります?」と声を上げてください。
● 心理的安全性の高い職員室を
失敗しても大丈夫。意見が違っても大丈夫。「ぼちぼちいこか」の精神で、お互いのプライベートや強みを認め合えるチームでありたい。教職員の「ワクワク」が、子どもたちの未来を照らす一番の光になります。
行動マトリクスは、子どもと「私たち」を守るためのツール。
・アンケートの「本音」に向き合って
昨年度末のアンケート、しっかり読み込みました。一番多かったのは「指導観のズレ」への悩みでした。「A先生には怒られたけど、B先生はいいって言った……」。これでは子どもがパニックになるのも無理はありません。
・ポジティブに行こう
本年度から導入する「行動マトリクス」は、子どもを縛るためのルールではありません。「ここではこうすればOK」を共有し、先生方が自信を持って「いいね!」と言える環境を作るためのものです。
・「見える化」は愛です
特に小学部のルーティンや、中学部・高等部の働くルール。写真やカードを使って「見通し」を子どもたちにプレゼントしてください。言葉で何度も叱るより、一枚の写真やイラストが子どもを安心させることがあります。「叱らなくていい教室」を一緒に作っていきませんか。
本校では「相手の顔を見てあいさつしよう」「笑顔でペコリしよう」が始まりました。早速、丁寧にあいさつしてくれる児童生徒が増え、嬉しいです。「小さなできた!」の積み重ねが大切だと考えています。
子どもを真ん中に「伴走者」として歩み出す
・「ぼちぼち」と言いつつ、アクセルも踏みます(笑)
新年度が始まりました。「今年度は、何が変わるの?」と不安な方もいるかもしれません。答えはシンプルです。「20年後の子どもたちの笑顔」のために、私たちの関わり方をアップデートしましょう。
・あの時、自分で選んだことが今につながっている
昔は「できないことを、反復練習で克服させる(できるようにする)」ことに重きが置かれていました。20年後の未来を想像してみてください。科学技術の進歩により暮らしが大きく変わっている可能性が大です。そのような時代を生きる彼らに必要なのは、「やらされる力」ではなく、「自分で選ぶ力」です。
・教師は「教える人」から「コーチ」へ
「さん付け」で呼び合い、一人の人間として尊重する。ICTなど言葉以外の方法も使いこなして、彼らの「言いたい!やりたい!」を支える。私たちは、彼らの人生の「最強の伴走者(コーチ)」としての役割が高まってきています。
~「資質・能力」を育むための、個別の指導計画の再定義~
次期学習指導要領に向けた議論が深まる中、私たち特別支援教育に携わる者にとって、その中核となるのはやはり「自立活動」の充実です。アンケートでも「ICF(国際生活機能分類)との関連」や「PDCAサイクルのスパン」について熱心な記述がありました。
自立活動を、単なる「訓練」ではなく、子どもの「一生の資質・能力」に繋げるための視点を整理します。
1 「三つの柱」を自立活動に落とし込む
次期改定でも重視される「資質・能力の三つの柱」を、自立活動の文脈で捉え直してみましょう。
・知識及び技能:自分の障害の状態を理解し、どのような補助具や手立て(合理的配慮の要求を含む)が必要かを知っていること。
・思考力、判断力、表現力等:直面した困難に対して、「どうすれば解決できるか」を考え、他者に助けを求めたり、方法を調整したりできること。
・学びに向かう力、人間性等:失敗しても「次はこうしよう」と思える自己肯定感や、自立への意欲を持つこと。
2 「社会モデル」は医療モデルを内包したもの
アンケートに「ICFと自立活動の関連」という意見がありました。自立活動の目標設定において、ICFの視点は欠かせません。
・医療モデル:「歩けないから、歩けるように訓練する(身体機能の改善)」
・社会モデル(ICFの視点):「歩きにくくても、車いすや環境調整を使って、みんなと一緒に活動に参加できる(活動と参加)」
自立活動の目標を「機能の回復」だけに置くのではなく、その先の「社会の中で何ができるようになるか(参加)」に置くこと。これが、次期指導要領が求める「社会に開かれた教育課程」の第一歩です。
3 「自立活動の流れ図」を形骸化させない
「短時間で設定できる方法」を求める声もありましたが、大切なのは「書く作業」の速さではなく、「仮説の精度」です。
・実態把握(なぜできないのか?):身体的な要因か、感覚的な要因か、それとも環境の要因か。
・指導目標(どうなりたいのか?):1年後の姿だけでなく、18歳(卒業時)の姿から逆算できているか。
・手立て(何をするか?):学校の授業だけでなく、家庭や地域でも「般化」できる再現性のある手立てか。
4 合理的配慮と「合意形成」のプロセス
次期指導要領では、合理的配慮の提供がより具体的に求められます。自立活動で身に付けた力が、そのまま「合理的配慮を自分で求める力(セルフアドボカシー)」へと繋がっていく。この一貫性が、個別の指導計画の質を高めます。
【自立活動の「PDCA」を活性化させる問い掛け】
・「その目標が達成されたとき、その子の『暮らし』はどう豊かになりますか?」
・「学校での特別な指導(自立活動)で学んだ内容をそれ以外の時間で使えていますか?」
・「この目標設定に、本人や保護者の『願い』はどれくらい反映されていますか?」
自立活動は、私たち教師の専門性が最も発揮される領域です。「流れ図」を埋めることが目的にならないよう、常に「子どもの未来の姿」を職員室で語り合っていきましょう。
・「学校ではこの環境(写真等を見せる)で成功しています。ご家庭(学園)のこの場面なら、同じようにできそうでしょうか?」
・「お忙しい中で無理をさせては本末転倒ですので、まずは〇〇の場面だけ『見守る』ことから始めてみませんか?」
・「学校でのやり方を、ご家庭(学園)でもやりやすい形にアレンジしてみました。一度試して、難しければまた一緒に考えましょう。」
「般化」の成功は、教師の指導力だけでなく、保護者との「信頼関係の太さ」で決まります。共に悩み、共に喜ぶパートナーとして、歩みを揃えていきましょう。
~家庭への般化を、子どもの『一生の力』にする視点~②
2 「家庭の事情」を情報の中心に据える
アンケートには「家庭=施設の場合の般化」についての悩みもありました。家庭環境は千差万別です。学校の理想を押し付けるのではなく、「その家(施設)のルーティン」に私たちが歩み寄る必要があります。
・「何ならできそうですか?」と問う: 「これをやってください」という依頼ではなく、「今の生活の中で、無理なく組み込めるタイミングはありますか?」と、生活の質(QOL)を壊さない提案を心掛けましょう。
・般化の優先順位を決める: 全てを家でやるのは不可能です。「これだけは一生の自立に繋がる」という一点(例:着替えの最後だけ自分でやる、など)を保護者と合意することが大切です。
3 PDCAサイクルのスパンを「18歳」に合わせる
アンケートで「18歳での社会参加に対してPDCAのスパンが長い」という鋭い指摘がありました。単年度の計画で終わらせず、数年先を見越した「般化のロードマップ」を保護者と共有しましょう。
長い目で見守る:今すぐ家でできなくても、「今は学校で確実に成功する時期。来年にはこれを家で試しましょう」という見通しを伝えることが、保護者の安心感(心理的安全)に繋がります。
~家庭への般化を、子どもの『一生の力』にする視点~
2学期のアンケートで、「家庭への般化」についての記事に多くの「なるほど!」をいただきました。特に卒業を控えた高等部だけでなく、全ての学部において「学校という特別な環境での成功」を「日常の暮らし」へどう移し替えるかは、私たちの最も重要な使命の一つです。#25、26と合わせてお読みください。
今回は、保護者と私たちが「同じ方向」を向くための3つのヒントを整理します。
1 「学校は練習、家庭は本番」という視点
学校は、環境が整えられた「特別な練習場」です。スモールステップで成功体験を積むには最適ですが、そこでの成功がゴールではありません。
・環境の差を認める: 学校でできることが家でできない時、それは「甘え」ではなく「環境(構造化や人的支援)が違うから」です。
・家庭での『再現性』を考える: 指導計画を立てる際、「これは家のリビング(施設)でもできる方法か?」「お母さん・おばあちゃん、施設職員でも無理なくできる手立てか?」を常に自問自答してみましょう。(次回へ続く)
~「教員のメタ認知」が子どもの未来を拓く~
2 「メタ認知」という羅針盤を持つ
変化の激しい時代において、私たち教員に求められる最も重要な専門性。それが「メタ認知」です。 メタ認知とは、「自分自身の思考や行動を、客観的に把握し、制御すること」を指します。
・感情のメタ認知:「今、私はあの子を諭そうとしているのか? それとも自分のイライラをぶつけようとしているのか?」
・指導のメタ認知: 「この『さん付け』は、形式的になっていないか? 心からの敬意が声の温度に乗っているか?」
・ 組織のメタ認知: 「同僚との意見の相違を、単なる『否定』と受け取っていないか? チームで子どもを守るための『視点の共有』として捉えられているか?」
このように、もう一人の自分が天井から自分を見つめるような視点を持つことで、私たちは「感情的な反応」を「教育的な対応」へと昇華させることができます。
3 変化を楽しむ「学び続ける集団」へ
アンケートでいただいた「素敵な職場の雰囲気づくり」への回答も、ここに行き着きます。 素敵な職場とは、全員が同じ意見を持つ場所ではありません。「自分の今の姿(指導)を客観的に見つめ、必要なら変えていく勇気」を、お互いに認め合える場所です。
まずは私たち大人が「自らを客観視し、学び続ける姿」を子どもたちに見せることから始まります。
私たちの「声の温度」が変わり、「問いかけ」が豊かになり、教員同士が「メタ認知」の結果を語り合えるようになったとき、学校は子どもたちにとって、より一層「安心できる、挑戦できる場所」へと進化していくはずです。
~「教員のメタ認知」が子どもの未来を拓く~
これまで「さん付け」呼称の徹底や「声の温度」への配慮、そして「指導観のズレ」をチームの強みに変える対話について発信してきました。これらは単なるマナーの改善ではなく、今、私たちが向き合っている「社会の劇的な変化」に対応するための不可欠なアップデートです。
1 「かつての正解」が通用しない時代
私たちが子どもだった頃の「当たり前」は、今の社会では通用しなくなっています。かつては「厳しさ」や「集団への同調」が美徳とされる側面もありました。しかし、今の社会が求めるのは、「多様な他者との協調」であり、「自律的な思考」、そして何より「一人ひとりの人権の尊重」です。
学校は、子どもたちが将来の社会へ羽ばたくための「準備の場所」です。だからこそ、私たち教員の指導観も、社会の変化に合わせて常にアップデートされなければなりません。「昔はこれでうまくいったから」という過去の成功体験に縛られることは、時に現在の子どもたちの生きづらさを生んでしまうリスクを含んでいる場合があります。(つづく)
今回のキーワードは「メタ認知」です。 授業中、あるいは子どもを指導している最中に、もう一人の自分が天井から自分を見下ろしているような感覚を持ったことはありますか?
•「今、自分は『さん』付けで呼んでいるけれど、声にイライラが乗っていないか?」
•「『ダメ』と言いそうになった今、なぜ自分は否定的な言葉を選ぼうとしたのか?」
このように、自分の感情や言動を、一歩引いて客観的に観察すること。これが教員のメタ認知です。
・「さん付け」と「声の温度」は、自分の心を知るバロメーター
#38、#39で「さん付け」の徹底や「声の温度」について書きました。これは単なるマナーやルールではありません。実は、呼び方やトーンを意識することは、自分自身の「心の余裕」を測るセンサーになります。「あ、今、語尾が下がって威圧的になったな」と気付くことができれば、そこから修正が可能です。気付かなければ、それは指導ではなく「感情の放出」になってしまいます。
・チームでのメタ認知:問いかけは「ギフト」
自分一人で自分を客観視するのは限界があります。だからこそ、チームが必要です。#42のヒント集に載せた「今の場面、あの子にはどう伝わったと思いますか?」という問い掛け。これは相手を責める「指摘」ではありません。相手が見落としているかもしれない視点を贈る「ギフト」です。「あ、そう見えていたのか」という気付きこそが、私たちの専門性を高めるメタ認知の瞬間です。(つづく)
【保存版】チームの空気を変える「問いかけ」ヒント集
| シーン | 相手への問いかけ・フレーズ例 |
| 指導が強すぎる時 | 「先生、お疲れではないですか? さっきの場面、あの子が少し驚いて固まっていたのが気になって…。」 |
| 納得がいかない時 | 「先生のやり方だと、あの子にはどんな変化が見られますか? 私も参考にさせてください。」 |
| 判断に迷う時 | 「今の関わり、あの子にはどう伝わったと思いますか? 一緒に振り返らせてもらえませんか?」 |
| チームで守る時 | 「余裕がない時はお互い様。そんな時、どう合図を出し合えばお互い(と子ども)が助かるでしょうか?」 |
こうしたフレーズを使うのは、勇気がいることです。特に経験の浅い先生にとっては、先輩に声を掛けるのは至難の業かもしれません。だからこそ、以下のことを職員室の「約束事」にしていきたいと考えています。
· 「指摘」ではなく「情報の共有」と捉える:「あなたの指導はダメだ」という否定ではなく、「私には子どもがこう見えた」という情報のシェアだと捉えてください。視点が多いほど、子どもの理解は深まります。
· 「問いかけ」を歓迎する文化を:もし同僚から「今の関わり、どうでした?」と聞かれたら、それはあなたを責めているのではなく、チームで子どもを守ろうとしている証拠です。その勇気に感謝できる集団でありたいと思います。
· まずは管理職を練習台に:もし私をはじめ管理職の関わりで気になることがあれば、ぜひこれらのフレーズを使って教えてください。「校長先生、今のあの子の表情見ました?」と言ってもらえるのを待っています。
2 「教室マルトリートメント」をチームで防ぐ
「指導」という名の下で行われるきつい口調や威圧的な態度は、子どもの脳にダメージを与えるだけでなく、学級全体の心理的安全性を損ないます。これを防ぐには、個人の資質に任せるのではなく、「チームで風通しを良くする」しかありません。
• 「問い」で対話を始める: 同僚の指導に疑問を感じた時、「それはダメです」と否定すると角が立ちます。代わりに、「今の場面、あの子にはどう伝わったと思いますか?」と、あえて問いとして投げ掛けてみてください。相手に「振り返り」のきっかけを贈る勇気が、教室の空気を変えます。
• 「弱さ」を見せ合える関係: 「今日は余裕がなくて、つい口調が強くなってしまった」と、先生自身が失敗を共有できるチームは強いです。その一言が、周囲のサポートを引き出し、不適切な指導の連鎖を断ち切ります。
3 素敵な職場の雰囲気は、子どもの笑顔の鏡
アンケートに「素敵な職場の雰囲気作りについて知りたい」という声がありました。素敵な職場とは、全員の意見が一致する職場ではありません。「意見が違っても、敬意を持って対話できる職場」です。
私たちの関係性がギスギスしていれば、子どもはそれを敏感に察知します。逆に、先生たちが助け合い、笑い合っている学校では、子どもたちも安心して自分を出すことができます。(次回へ続く)
2学期のアンケートでは、多くの熱心な意見をいただき、ありがとうございました。その中で、私の心に残った切実な声があります。それは、「先生によって指導の口調や考え方が異なり、戸惑うことがある」「教室でのきつい指導を見かけると苦しくなる」というものです。
特別支援教育は、正解が一つではありません。だからこそ、現場で起こる「指導観のズレ」にどう向き合うかが、私たちの専門性を左右します。
1 「正しさ」のぶつかり合いから「子どもの反応」へ
私たちは皆、「子どものために」という強い熱意を持っています。しかし、その熱意ゆえに「自分のやり方こそが正しい」と、正しさのぶつかり合いが起きてしまうことがあります。そんな時こそ、主語を「私」から「子ども」に入れ替えてみませんか。
• 「私の指導に従わせる」ではなく、「今の関わりで、あの子に安心感(または学び)は生まれているか?」
• 「あの先生のやり方は違う」ではなく、「あの関わりに対して、あの子はどう反応したか?」
「子どもの事実」を共通の物差しに据えることで、感情的な対立ではなく、建設的な「検討」が始まります。(次回へ続く)
前号では「さん」付け呼称をお伝えしました。今号では、私たちがさらに意識している「声の大きさ」や「抑揚(トーン)」、つまり「伝え方」について触れます。
1 感情をぶつけない「適切なボリューム」
人権に配慮した指導の第一歩は、子どもの恐怖心を煽らないことです。大きな声で怒鳴ることは、一時的に子どもを従わせることはできても、心の奥に届く「納得」や「自己肯定感」を奪ってしまいます。
〇 人前で叱らない: 必要な指導は、相手のプライバシーに配慮し、落ち着いたトーンで静かに伝えます。
〇 安心の距離感: 威圧感を与えないよう、目線を合わせ、適切な声の大きさで語り掛けることを職員間で徹底します。
2 「肯定」を乗せる抑揚(トーン)の工夫
同じ「さん」という呼び方でも、語尾が上がれば「期待」になり、語尾が下がれば「威圧」になります。
〇 「褒める」は明るく、弾むように: 子どもの「できた!」に共鳴するよう、声に表情をつけて喜びを伝えます。
〇 「諭す」は穏やかに、低く: 何がいけなかったのかを考える場面では、感情を抑えた一定のトーンで話すことで、子どもが冷静に自分の行動を振り返る「心の余裕」を生み出します。
3 「否定の言葉」を「お願いの言葉」へ
「ダメ!」「やめなさい!」という鋭い響きは、子どもの思考を停止させてしまいます。さんを付けた上で「〜してくれると助かるな」「〜するともっと良くなるよ」といった、語尾を柔らかくしたメッセージに変えることで、子どもは「自分を否定された」のではなく「行動のヒントをもらった」と受け止めることができます。
先日の学校評価と職員会議では、「児童生徒一人ひとりの人権を尊重し、自己肯定感を高める指導」を教育の柱として再確認しました。子どもたちが「自分は大切にされている」「自分には良いところがある」と実感できる環境づくりの一環として、学校生活における「さん付け」呼称を徹底します。
なぜ今、「さん付け」なのか。
1 「尊重」を形にする第一歩
子どもたちを一人の人間として尊重し、敬意を払う。これは人権配慮の基本です。 日常の何気ない呼び方から見直すことで、教職員と子どもたち、あるいは子ども同士の間にも、温かく、適切な距離感のある礼儀正しい関係性を築いていきたいと考えています。教師は子どもたちのモデルです。子どもの前で教師間が声を掛け合うときは「先生」と呼ぶことも同様です。
2 「褒める言葉」を真ん中に置くために
私たちは、指導の原則を「指示・命令」から「承認・称賛」へとシフトしていきます。 「〇〇しなさい」と先回りするのではなく、子どもが自ら気付いて行動するのを待ち、その過程や努力を「さん」と呼んで丁寧に認める。そんな「褒める言葉」が溢れる学校を目指します。
3 社会へのつながりと「自己肯定感」
学校は、子どもたちが社会へと羽ばたく準備をする場所です。 相手を尊重する呼び方を習慣化することは、将来の社会生活における基盤となります。自分の名前が丁寧に呼ばれる経験の積み重ねは、「自分は認められている」という自己肯定感に直結し、それが得意なことを伸ばすエネルギーに変わっていきます。(次回へ続く)
◇ できる状況づくりについて
・全体への分かりやすい指示、十分な学習量が保たれている(待たされている生徒がいない!)。また、一つの曲を題材に様々な角度からアプローチし、目標に迫る指導は知的障がいのある生徒の学習上の特性を踏まえると効果的であり、「活動の質」を高める上で、多くの教員が参考になる。
・「そう!」「きれい」「すてき」「ばっちり」などポジティブな言葉のオンパレードは、子どもたちのモチベーションアップにつながる。
・MTのポジショニングは生徒全員を見渡せる位置が理想。10名ほどの生徒を横一列に着席させるなら、1メートルほど距離をとるか、扇形に座らせた方がよい。
◇ 指導・支援の在り方について
・授業の終末で、MT教師が振り返りの見本を示したことにより、生徒の発言も目標に関連した振り返りになっていた。Aさん「元気よく」Bさん「静かに」Cさん「楽しく」などの発言は、和音Ⅰ、Ⅳ、Ⅴのキーワードであり、本時の目標を達成した根拠になるのではないか。
・STからの振り返りも、本時の目標を取り上げながら、生徒の具体的な姿を評価していて素晴らしいと思った。
◇ 学びの連続・般化
・単元計画を立案することの大切さを感じた。
・活動内容に惑わされず、指導内容を突き詰めていくことの大切さを感じた。
・子ども自身が楽しいと思う授業が増えることが、余暇や家庭生活の充実につながる。
#17でも触れましたが、全国の現状から次のようなことが課題として示されています。
【学校経営・授業改善では】
・障害の「社会モデル」の考え方も踏まえた学校経営や授業づくりが特別支援学校にも求められているが、全ての教師に考え方が浸透しているかどうかについては課題がある
・障害により生じる困難さに対応しつつ、子供たちの資質・能力を育成するための授業づくり、各教科等の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善は、多くの特別支援学校において道半ばの状況
【自立活動では】
・自立活動の時間の指導と各教科等の指導の関連付けや、自立活動に係る実態把握から指導目標・内容の設定までのプロセスや考え方の浸透が不十分
・教師主導型の自立活動の改善も課題
【知的障がいの各教科】
・小・中・高の学びとの連続性の確保を図りつつ、知的障害の特性や発達の段階等を踏まえた対応が必要
本校・分校とも学校評価や年度末反省の時期を迎えました。「チームで子どもたちのために」こうした視点も含めて検討してほしいと考えています。
今年度の重点のひとつに、「保護者や地域と直接の関わりによる、子どもたちの学びの機会を広げ、感謝を伝え合う教育活動の推進」があります。
本校高等部では、学校運営協議会での御意見を踏まえ、地域食堂や沖縄民謡など、地域の方との連携に基づいた教育活動が充実してきています。
この取組の良いところは、活動の振り返りが充実していることです。活動をやって終わりではなく、地域の人から(感謝や激励の)メッセージをもらったり、生徒がお礼を書いたりするなど、感謝を伝え合う活動になっています。
この方法はさらに進化し、高等部祭の時には、保護者や地域の方の感想を動画に撮って事後学習に用いるほか、小学部や中学部の学習発表会でも同様の取組を行っています。文字を見て分かる子どももいれば、映像を見れば分かる子もいて、個別最適な学び(指導の個別化)が図られています。
#27でも触れましたが、多様な人から多様な方法で称賛されることで、子どもの自己肯定感は高まります。#34を充実させる上で、伝えたいというマインドが育ち、書いたり、話したりすることへの意味付けが出てきます。
知的障がいのある子どもの学習上の特性に配慮した、生活に結びついた内容であること、繰り返しの学習であることなど、本事例から多くのことを学ぶことができます。掲示物などを使って子どもと関わり、言語能力が高まることを期待しています。
言語活動の充実を図る上で、大切なことは、その前提となる言語環境を整えることです。 学校生活全体における言語環境の整備としては、例えば、教師との関わりに関係することとして
①教師は正しい言葉で話し、黒板などに正確で丁寧な文字を書くこと
②校内の掲示板やポスター、児童生徒に配布する印刷物において用語や文字を適正に使用すること
③適切な言葉を使って簡潔に分かりやすく話すこと
④より適切な話し言葉や文字が用いられている教材を使用すること
⑤教師と児童生徒、児童生徒相互の話し言葉が適切に行われるような状況をつくること
⑥児童生徒が集団の中で安心して話ができるような教師と児童生徒、児童生徒相互の好ましい人間関係を築くことなどに留意する必要があります。
本校・分校とも学習発表会に合わせて、②校内掲示なども充実しています。掲示物を使って⑤や⑥などに取り組み、言語活動が充実することを期待しています。
ある研修会で聞いたすごい学校の話を紹介します。その学校では講師を呼んで校内研修を実施する際、その講師から研修の2ヶ月前に研修資料をもらうそうです。資料だけでなく、関連する書籍、論文などを講師から指定してもらい、職員全員が読み込みを行うそうです。
そして研修当日、例えば90分の研修であれば、冒頭の20分程度で講師の話を終え、その後の60分は先生方が講師に質問をぶつけ、暗黙知を形式知に変えたり、質問に関する考え方などの共通理解を図っているそうです。
そして最後の10分は講師に話し足りないことを説明してもらうそうです。この学校が行っている研修のスタイルは、一般的な受講型の研修に比べると、学びの質が異なると思います。このスタイルを経験した講師はタジタジになったと話していました。
この学校の特徴は、教職員の自主・向上性と同僚・協働性が高く、学校全体の教育実践の方針に教員個人の教育実践が位置付き、チームワークを考えながら個人の能力を発揮している状態であり、教職員一人一人の意識や組織力の高さは言うまでもありません。同じ時間をどう使うか、研修や会議の持ち方を考えさせられる機会となりました。
本校・分校の職員会議で話した内容です。
この半年を振り返ると、本校では、文科省のインクル事業で素晴らしい交流及び共同学習や、地域食堂と温かみのある連携など。
また、分校では、石別大運動会の参加種目の拡大や、今金町での居住地校交流など、これまでの取組が充実したものもあれば、新たな取組となったものがある。
改めて先生方への感謝をお伝えしたい。
今年度も残り、半年を切った。本校・分校の素晴らしい教育活動を如何に持続可能なものとし、発展させていくか。その際、今年度の重点である「チームで」というファクターを通して評価していくことが重要であると考えています。
「チームで」=集団を意味しますが、今年度の先生方の取組の様子から、本校では、様々な背景のある子どもたちに対するケース会議が行われ、困難を解決するための建設的な話し合いがもたれていた。また、分校では、あおいそらのコンサルテーションを通して、子どもたちへの指導・支援が充実してきたことは、評価すべき内容と考えている。
ここまで個にスポットを当てて、子どもたちのために取り組んでいる学校は少ないのではないか、本校・分校とも校長として誇らしく思うと同時に、次のステージ
・全職員が学校経営に主体的に取り組む段階
・全職員でより組織的に取り組む段階
にチャレンジするべきではないかと感じている。
評価の話に戻りますが、学校では一般的に、授業や行事などその時々の評価や、時期に応じて実施する年度末評価、学校評価があります。これらの評価は、そのものの善し悪しを評価したり、具体的に改善することには適していますが、組織そのものを評価することは難しいという側面があります。
どういう組織が、望ましいか。それは、令和の日本型学校教育などを踏まえると、変化の激しい社会、多様化する様々な問題に対応できる組織です。学校は従来から鍋蓋式の組織と言われることが多いのですが、鍋蓋式の組織では、様々な課題を解決したり、変化を受け入れたりすることが難しいと言われています。
今求められている組織は全ての教職員が自主性や向上心と同僚性と協働性を兼ね備えている、自走する学校組織です。それは、全ての先生が教職に対して、やりがいと幸福を感じるウェルビーングな組織を意味します。
組織を評価するといっても、学校と一般企業では、その性格も異なることから、企業とは方式が異なります。そのため、早稲田大学の河村先生が開発した尺度を用いて本校・分校の組織の状況を分析し、可視化することやホワイトボード・ミーティングの手法を用いて、コミュニケーションを高めたり、経験値や暗黙知を標準化するなど、先生方の所属意識がさらに高まる「職員全員が活躍できる組織」を目指したいと思います。
こうした取組は、学校教育目標や目指す学校像など、根幹部分の見直し、教育課程の改善や分掌業務或いは配置人数の見直し、PDCAを前提とした諸会議の実施やゆとり時間の確保など、検討すべきことは多岐に渡ることも想定されますが、チームで、子どもたちのためにあるべき組織の姿を共有したいと思っています。
今年度から分校で実施している居住地校交流について紹介します。居住地校交流とは特別支援学校に在籍している子どもが、本来通うはずだった地域の学校と交流及び共同学習を行うことです。今回の取組は、保護者の意向はもとより、分校と相手校の先生方の協力、そして子どもの居住地である町教育委員会の全面的な支援(分校から居住地までの送迎、発達支援センター職員が子どもを支援、保護者との連絡調整など)で実現したものです。
町教委の方に話を聞くと、「町の子どもは町で育てる!」「学ぶ学校(場)が異なっても、町の子どもには変わりない!」とのことです。
こうした熱い想いのもと、実施された1回目の居住地校交流では、小学校の玄関をくぐることに長い時間を要しましたが、町職員を始めるとする大人の粘り強くも温かい対応と子どもたちの働き掛けにより、レクレーションや給食など有意義な活動を体験することができました。
そして2回目の交流は、前回と比較にならないほどスムーズに学校に入り、体育の授業に参加し、給食を食べました。体育の授業では①ラジオ体操②柔軟体操③枕(クッション)投げ④転がしドッジボールで構成された45分の授業に参加しました。これは特別支援学校の課題である豊富な学習量が用意(#01と関連)されていて、我々も学ぶべきことがたくさんあると思いました。また、本児の支援に当たっている町職員の関わり方(#02と#23と関連)ティーム・ティーチングが素晴らしかったです。さらに#30でも触れたように、たくさんの見本があるので、列に並んで話を聞いたり、集団に合わせて行動したりする場面が多く、参観した保護者は本児の成長と就学前まで一緒に過ごした子どもたちと共に学べる環境を喜んでいました。
本児は町教委から副学籍の扱いを受けています。教室には本児の机やロッカーも整備されており、学習環境も整ってきました。
居住地校交流は全国的に進んでいますが、北海道の学校は広域分散型などの地理的条件から、実施しているケースは少なく、分校と町教委の取組が最先端です。
今後、本校・分校に通う子どもの保護者が居住地校交流を希望する可能性もあります。「子どもたちのために」を合言葉に本事例から学び、成果や課題等を整理していけたらと考えています。
本校中学部2年生が七飯中学校の学校祭に参加しました。#22、#24で紹介した音楽の授業で取り組んだ手話歌「翼をください」です。中学校の生徒が作り出す(お手本があちらこちらにある)雰囲気もあり、普段の授業では、手話をしない生徒が手話をしたり、いつもより大きな動作をしたり、しっかりと歌ったり、本校の生徒も普段の音楽の授業の時よりも素晴らしいパフォーマンスを発揮していました!
学校祭に向かうまでの単元にブレがなかったこともあり、これまでインクル事業で課題となっていた共同学習の側面を克服し、3観点で評価できる取組となりました。
また、これまでの積み重ねがあるから、生徒同士が安心、信頼して関わり合うなど交流の側面もしっかり果たしていたことは言うまでもありません。
これまでも触れてきましたが、まずは集団を重視した授業が基本であり、その上で個別に配慮することの大切さ、集団の持つ力の可能性を改めて感じた瞬間となりました。
本校高等部2年生が、今年度の新たな取組として、渡島振興局と町内の果樹園に御協力いただき、農福連携(りんごの葉摘)に取り組みました。
本取組の良かったこととして3点。
1点目は単元計画を立てて取り組んだこと。特別支援学校の十八番と言える事前学習では、オーソドックスな行き先や活動内容に留まることなく、七飯町の産業やりんごの品種など、様々な実態の生徒に適した事前学習であったこと。また、事後学習では単なる活動の振り返りにとどまらず、自分の言葉で手紙を書いたり、事前学習で調べた品種による味の違いを確認するなど、単元をとおした学習活動であったことが評価できます。
2点目は#01でも伝えていますが、十分な作業量が保障されていたこと。実際に30分×2セットの授業でしたが、生徒はミルミル内に上達していきました。また、りんごの葉摘が難しい生徒には、落ちているりんごを拾うなど、個に応じた活動が提供されていたこと。その成果は果樹園の方へのお礼の場面で、ただ「がんばりました」というだけでなく、何が良かったのか、難しかったのは何かなど生徒が自分の気持ちを言語化していたことからも明らかです。
3点目は様々な方から助言いただいている、体力を高める内容であったこと。計60分の立ち仕事をこなし、帰りの道中も歩いて帰ってきたこと。本物の作業体験をした生徒は自信と充実感に溢れ、頼もしい姿でした。
これから期待したいことは、貴重な本物の経験を次年度の教育課程に反映していくこと、普段の作業学習の当たり前を見直すことです。貴重な経験をした先生方は、答えは地域にある、生徒の気持ちを揺さぶることが大切と感じられたのではないしょうか。今後の教育活動(教育課程)に「つながり」「つなげる」ことの大切さを学んだ1日でした。
早いもので、今年度も折り返しました。そんな中、9月26日には分校で、27日には本校で学校運営協議会を開催し、委員の皆様から貴重な意見を伺いました。
分校は本校より早くCSに取り組んでいることもあり、石別地区の大運動会やトラピスト修道院のライトアップなど、様々な教育活動がすでに教育課程に位置付いています。
本校は地域食堂との連携や沖縄文化に触れる学習など、昨年度よりも取組が充実してきています。
CS委員は学校運営に関する意見を校長に述べることができます。
分校の委員からは「ライトアップの時に紙漉き製品を置けないだろうか」、本校の委員からは「今年度の取組を継続できるようにしてほしい」と意見をいただきました。今年度に関しては、こうした取組を試行的に行うことになりますが、活動ありきではなく、様々な活動を通して子どもの資質・能力を高めていく必要があります。そのため、持続可能で発展的な取組となるよう、教育活動の成果を次年度の年間指導計画(教育課程)に位置付けてほしいと考えています。
※ 本校の学校運営協議会では、高等部の生徒が調理学習で作ったスイーツを委員の皆様に出してくれました♪生徒が自己紹介し、調理でがんばった点を説明するなど、委員にとっても生徒にとっても素敵な時間になりました!
子どもを褒めるときの方法は、望ましい行動をしたときに、①お菓子など具体物を使う②ハイタッチなど身体接触で褒める③言葉で褒める④トークンを使って褒めるなど、様々あります。この時注意してほしいのが、これらは、褒められた後、記憶にも記録にも残らない可能性があります。
私は教員時代、支援ツールで有名な武蔵博文先生から教えてもらったのが、チャレンジ日記です。係活動や作業学習などでがんばったことに対して、子どもが文字で書いたり、シールを貼ったりします。そのチャレンジ日記を授業の場面で使ったり、家庭に持ち帰らせたりすると、学校でも家庭でも褒められる回数が格段に増え、がんばっていることなどが周囲の人に伝わります。また、記録に残るので、子どもが自分で見返す場面も出てきます(当時は紙面でしたが今はICTの活用もできるかも知れません)。ポイントはひとつのファイルに集約することです。
ひとつの行動を多様な方法、多様な場面で、子どもを褒め、自己肯定感や学習に対するモチベーションを高めることが大切だと考えています。
子どもたちの大好きな調理学習。私も教員時代よくやっていました。ホットケーキを作ったり、ドーナツを作ったり、子どもたちが喜ぶものをたくさん作った記憶があります。
そんな調理学習ですが、河嶋淳子先生(医師を辞めて、重度自閉症の子どもを育て、愛媛県で長年にわたって独自の療育を実施)の療育センターを伺い影響を受けました。
ざっくりというと、調理を通して「指先を育てる」「レシピを見て(読んで)指示に従う」です。
子どもたちの中には、指先の器用な子もいれば不器用な子もいますが、低学年のうちから包丁やピーラーなど、実践的な調理器具を使います。包丁で切ったり、ピーラーで皮をむいたりすることは、結果も分かりやすく、子どもたちも喜んで取り組みます。
調理器具をもつ「危なさ」は、子どもたちが一番理解しています(留意点としては、包丁やピーラーを研いで、よく切れる状態にしておくことです!切れない包丁を持つと力が入って危険です)。
指示に従うという点では、例えば、炊飯や味噌汁づくりから始めました。水の量を間違えるとご飯も味噌汁も美味しくできません。レシピに書かれている〇合や〇CCの指示はあいまいさがなく、美味しくできる=結果も分かりやすいです。
こうした活動は、家庭でも、保護者の手伝いにつながったり、将来の自炊にもつながります。ねらいを明確にして楽しく学習に取り組んでほしいと考えています。
知的障がいや自閉症のある方は、一般的にある場所で身に付けた知識や技能等を別の場所で発揮することが難しいことがあります。
例えば、学校の係活動として洗濯物をたたむことに取り組んでいる子どもがいると思いますが、家庭に般化することのできる取組になっているでしょうか。
私は教員時代、学校研究の一環として、全家庭に担任が訪問し、家庭で行えるお手伝いを指導することに取り組んだことがあります。
その時驚いたのが(ある意味当然ですが)、「タオルをたたむこと」1つをとっても、端と端を合わせて文字通りタオルをたたむ家庭もあれば、1回たたんでタオルをまるめるなど、家庭ごとにその方法が異なるということです。
学校で取り組んでいる方法を家庭に押し付けても、迷惑を掛けてしまうこともあります(実際に「このたたみ方は困る!」と怒られたこともあります)。
学校での成果を家庭につなげるためには、懇談などの機会を通じて、あらかじめ家庭でのやり方や好みを聞いて指導を行うことが早道のように思います。
昨日の校内研究で話した内容です
今年度春の職員会議で中学部2年生が七飯中学校の体育大会に参加した映像を見てもらいました。そして、今は学校祭の参加に向けて取組を進めています。春と秋で何が違うか。
正直、体育大会の時は、体育で目標を立てて、出向きましたが交流することがメインとなっていました。しかし、学校祭に向けては、単元計画を作成するなど、教科のねらいを達成する共同学習へと変容しています。セブンライスにも記載しましたが、単元を見通した上で、どのような力を付けていくか、どのタイミングで映像を見合うなどの間接交流と学校祭本番の直接交流を行うか。中学校音楽との学びの連続性を意識するなど、交流及び共同学習を行うことを目的とせず、生徒の学びを促すための手段としていることが、今年度の中2学年団の大きな成果だと考えています。
先日中2の先生とこうした成果を共有した上で、ある先生に、音楽で単元を見通した指導ができたわけですから、例えば作業学習など他の授業でもできないの?といったやりとりをしましたが、今年度の重点のひとつに掲げている「根拠に基づいた授業づくり」を全ての学部、学級で目指してほしいと考えています。
現中2の昨年度と今年度の取組を振り返ると、1年生の時は交流中心、2年生で共同学習中心で整理することができると思うが、じゃあこの成果をどうするか。
具体的には
・中学部としてどうしていくのか、小学部や高等部はどうしていくのか。
⇒ 「つながり」や「つながる」、「ともに学ぶ」といったキーワードは次年度の学校経営の柱になる可能性があるとも考えています。
是非、各学部や総務、教務等関係分掌で話題にしていただき、次年度の教育課程改善に向けた検討をお願いします。
その際、布施先生の視察報告にもありましたが、高校も含めた町内の学校とビジョン(理念)を共有していくことが重要と考えています。8月に実施した合同研修会で教育大の杉本先生から、PBSの考え方を御教示いただくとともに、行動マトリクスについて提案いただきました。
ビジョンを共有するに当たって、行動マトリクスは効果的なツールになり得ると思いますので、こうしたことについて、研究部を中心に校内研修でまとめ、発信していくことなどを期待しているところです。
最後に、交流及び共同学習に限らず、あらゆる教育活動を行うことを目的にするのではなく、様々な活動や取組を通じて新たな価値を生み出す、新たな価値に基づき次のチャレンジをしていく、そんな好循環を学校全体で目指したいと考えていますので、引き続き先生方の主体的な取組をお願いします。
ティーム・ティーチングを少し工夫するだけで、子どもの成長を促すことができます。ここでは、#02と#14、#15に関連して説明します。
体育で体操する場面や音楽で手遊びなどを指導する場面を観察していると、図右上のような指導体制で子どもの動きを引き出そうとしている様子を見掛けます。この場合、T2の先生がT1の先生と同じ動きをしていても、子どもからは見えないので全く効果がありません。右上で子どもの動作を促すのであれば、T2はT1への注目を促すことと、子どもが適切な動作が行えるよう、身体的プロンプト(介助ではなく、気付きを促す)を出すことなどが求められます。
また、動作はまだぎこちないけれども、みんなの前に立って「お手本になりたい」というモチベーションの高い子どもがいる場合には、図中央のような指導体制でT3の先生がモデルを示して、C1に手掛かりを与えることが有効であり、子ども同士のやりとり機会にもつながります。
さらに、全体指導でT1を注視することが難しい集団や、集中的に技能を高めたい場合には、図下のように複数の先生が前に出て、子どもの動きを引き出した方が活動のねらいに即した指導を行うことができます。
普段何気なく行っているティーム・ティーチングは、とても深い指導方法です。今一度、学級や学年で打ち合わせるなど、チームで子どもたちの成長を促していきましょう。
七飯中学校学校祭の舞台で披露する中学部2年生の音楽(手話歌「翼をください」)の単元が始まりました。ここでは、#01と#02に関わる内容を中心に説明します。
授業は、発声、音に合わせた動き、手話歌・・・と進むのですが、どの活動も活動量が十分に確保されていること、MTの全体への指示が明確で、発問や指示を出すときの声の強弱、テンポも工夫していました。また、STは生徒がMTに注目できるような働き掛けに徹していて集団の授業として理想の形となっていました。
授業を行う上で大切なのは、集団全体に分かりやすい指示や手掛かりを行うこと、十分な学習量を保障することです。その上で個別の配慮を行い、活動の質を高めていくことが基本です。
興味のある先生は中2学年団に相談の上、参観し、この授業の良さを体感してください。
また、本実践のよいところは単元計画を定め、単元初期の授業は「知識・技能」が高まるよう、活動量を十分に確保しています。単元が進むにつれて「思考力・判断力・表現力等」に関わる指導を行うなど、単元をまとまりとして捉え、育成すべき資質・能力を生徒が身に付けられるよう学年の先生方が共通理解を図り、指導を行っていることです。手話歌「翼をください」の題材は毎回取り組んでいますが、授業ごとのねらいに応じて、指導内容が異なるので、生徒も生き生きと活動しています。
その結果、音楽の楽しさを子どもが感じ、授業を重ねるうちに、大きな声で歌唱する生徒や歌に合わせて、大きな動作で手話をする生徒が増えるなど、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」が高まってきており、今後が楽しみです。
好事例を参考にチームで専門性を高めていくことを期待しています!
なお、個別の指導計画にかかわり、前期の評価や後期の目標を立てている時期だと思います。分校の湯谷教頭が研修で学んだ内容をまとめていますので参考にしてください。
プリント学習に取り組んでいる子どもはたくさんいると思いますが、ただ問題を解くことだけにとどまっていませんか。ここでは#05、#14、#15に関連する本校小学部6年生の取組を紹介します。
当該児童は解が3桁になる足し算に取り組んでいます。1枚のプリントに16問の問題(横に4問、縦に4問)が準備されており、声に出しながら先生と確認しながら取り組んでいて、筆算の要領がつかめてきたところで、1列(4問)の解の中で、「一番大きい数字は?」「一番少ない数字は?」といった発問を行いました。機械的に計算ができる子どもはたくさんいますが、このように算数がもつ面白さ、数量の概念を常に確認しながら、課題に取り組むことは、金銭や買い物、時刻と時間の学習にもつながります。
また、計算と数の大小概念を確認した後、声を出さずに計算することに取り組みました。頭の中で計算し、答えを出すことは一見簡単そうに見えて、実は難しいことです。当該児童は、求められていることをすぐに理解し、実行していました。その結果、声に出していたときと比べると、明らかに計算の速度が上がりました。「声に出さずに計算できる=頭の中で数を操作できている」ということですから、国語でも黙読できる可能性が高く読解や出来事を思い出しながら日記を書くことにも成長が期待できます。
手続きをコロコロ変えると混乱する子どもは混乱しますが、手続きが定着したら、一つの教材で多様な関わり方を試し、子どもの可能性を探っていくことにチャレンジしてみてください。
子どもに知識や技能を授けようとするときに、よく行われる方法として課題分析があります。例えば歯磨きをするときに、①歯ブラシに歯磨き粉を付ける。②歯ブラシを口の中に当てる。③うがいをする。などの手順で、「できているところ、できそうなところ、できていないところ」を評価し、指導を進める方法です。
私は教員時代、子どもの余暇を研究している時があり、家庭でも楽しめるようにトランプを教えていました。筑波大学の野呂先生に「楽しさを課題分析してはどうか」と助言され、「どきっ!」としたことを今でも覚えています。
当時「ババ抜き」をしていて、このゲームの楽しさは「数字をマッチングすること」と「ジョーカーを引かないこと」です。特に数字をマッチングすること(スキル)は、子どもたちも理解しやすく、すぐに覚えます。しかし、ジョーカーを引いてしまったときの感情や対応の仕方を教えることやジョーカーを引かなかった時のうれしさを子どもに教えることは、なかなか難しいです。そのため、配るトランプの枚数を少なくし、このことが起こりやすい状況をつくり、繰り返しの指導をしました。そうすると、絶対に勝ちたい(いわゆる1番病)の子どもも、ジョーカーを引く頻度が多いので、勝つことだけにこだわなくなったり、あまり感情を出さない子どももトランプを抜くときのドキドキ感を表情に出すようになったりするほか、休み時間に自発的にトランプを楽しむ様子が見られるようになりました。
この時の学びを生かして、別の子どもたち(小学部中学年)には「自転車に乗ること」を教えました。自転車に乗る楽しさを「風を切る爽快感」と「バランスをとるハラハラ感」とし、最初に行ったのが、ペダルを外して、坂道を下ることです。「危ない」と思う人もいるかも知れませんが、危なさは子どもが一番分かっているので、転びそうになる前には、足をついて減速しますし、バランスが取れているときには、笑顔で風を切る爽快感を楽しんでいました。こうして楽しさを十分に味合わせてから、ペダルを漕ぐことも教えました(多分、ペダルこぎから教えたら、楽しくなかったと思います)。
しばらくすると指導していた子ども全員が乗れるようになったので、グランドや校舎まわりを時間いっぱい走ったり、交通公園に入って信号を守ることや一時停止することなど交通ルールを指導しました。こうした様子を保護者にも実際に見てもらうことで、「家庭によっては見通しのよい道路で子どもとサイクリングに出かけた」という報告を受け、嬉しかったことを覚えています。
夏休み、本校の高等部1年生生徒と先生方がチームを組んで、ティーボール大会に出場しました。分校では子どもたちの絵画や書道作品を「いさりび鉄道作品展」に出展しました。学校で行う活動には、楽しい要素がたくさん詰まっていると思います。「楽しさ」を課題分析して、子どもたちが「楽しさ」を感じられる活動をたくさん行ってほしいと考えています。
※終業式の日に本校集会でお話した内容です。
「個人攻撃の罠」という言葉をご存知だろうか。行動分析の言葉であるが、行動変容を求める手立てを行うのではなく、「家庭的に保護者が難しいから」や「あの子は変わらない」、「担任団が悪い」「協力を得るのが難しい」など、人のせいにして十分な手立てを施さないことを「個人攻撃の罠に陥る」という。
本校には無縁かもしれないが、個人攻撃の罠に陥らないため、私の事例をもとに上げたい。14年間の教員生活の半分は行動上大変と言われる子どもを担任してきた。私の教員人生の価値観を変えたのは約25年前に知り合ったsさん。高等部の3年間を担任していた。IQの程度でいうと40程度ある自閉症を合わせ有する生徒であった。高1の終わり頃から、家庭で大変ということで登校がままならなくなった。
学校に登校しても、トイレに長時間こもったり、特定の職員をみては、興奮したり、小学部など、小さい子どもの声に反応しては大きなトラブルに発展していた。体重が100キロある生徒であり、一度トラブルが起こると、モノは壊れ、人は怪我をする、気持ちも折れる、そんな毎日であった。どういった状況でトラブルが起きているかデータをとったところ、特に多かったのが、給食の時に特定の職員を見かけ追いかけ回すということであった。
食べることが大好きなsさんであったが、データに基づき、私は担任として学部主事と管理職、保護者に給食を止めて、自炊すること、日課は集団とは別日課を原則とすることを提案し、了承を得た。基本的には別室対応で、1-1の指導を行い、例えば、うどんを作るとなれば、朝から小麦粉を踏み、生地を寝かす時間には課題学習を行ったり、軽作業を行った。教育課程上の位置付けは自立活動を中心とした。
食費は保護者から月に1万円負担してもらった。この取組から学んだことは、活動で支えることです。知的障害と自閉症や発達障害を持つ子どもたちに私たちの正論をぶつけても、こちらが期待している行動をすることは難しい場合が多い。自然発生的に望ましい方向に行動変容することは、ほぼない。だとしたら、問題行動が起きにくい状況づくり、すなわち問題を起こすからこそ、具体的な活動で子どもの行動を支えることの大切さを学んだ事例です。
この事例には続きがあって、月曜日から金曜日まで、担任である私がsさんを個別で見ることは他の生徒もいることから難しかった。そのため、学級付き、学部付きの先生が同じ取組を行うだけでなく、小さな子どもを不用意に近付けないなど、他学部の先生にも自分ごととして、協力をいただいた。
具体的な方針のもと、子どもを行動で支えるうえで、チームで取り組むことの重要性を学んだ取り組みであった。こうした取組の結果、問題行動が激減し、卒業時期には問題行動も激減し、行事への参加や一部の授業には集団参加が可能な状態となり、進路も決定した。
本校には、様々な背景を持つ子どもが在籍している。本校では年間約1,000時間の授業時数を配当し、指導を行っている。3年間で3,000時間、6年間で6,000時間、12年間で12,000時間である。この貴重な時間が「個人攻撃の罠に陥らないよう」また、本校の教育が次のステップに進むためには「学校が楽しい」と子どもが感じる授業づくりが重要になると考えている。
教員時代の私が管理職や周囲の先生方に協力いただいたように、積極的なアプローチは特別日課も含め、校長として応援したい。これまでの指導を振り返っていただき、「子どものために、チームとして」必要に応じて2学期以降の実践を改善してほしい。
~特別支援教育に関わる小・中・高の課題~
通常の学級、通級による指導、特別支援学級に関わる課題と方向性が議論されていますが、ここでは通級による指導について触れます。
主な課題として
⚫現行の制度では、障害による困難の改善・克服を目的とした指導(自立活動)と通常の学級での授業で構成されており、通級による指導を利用している子供も含めて、通常の学級に在籍する障害のある子供たちは、障害のない子供と同一の目標や内容で各教科の学習に取り組むことが前提であり、通級による指導においては各教科について教育課程上の特例的な取扱いはできないなど、障害の状態等に応じたきめ細かな指導の実現に課題がある。
方向性として
◇通級による指導において、障害の状態等を踏まえ、特に必要がある場合には、各教科の指導を行うことも可能とすることや、通級による指導の授業時数の上限を見直すことを検討してはどうか。
◇各教科の指導に当たっては、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したものに替えることや取り扱わないことなど、児童生徒の障害の状態等に応じた教育課程の編成を認めることを検討してはどうか。
◇通常の学級においても障害の状態等を踏まえ特に必要がある場合には、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したもに替えることや取り扱わないことなど、児童生徒の障がいの状態等に応じた教育課程の編成を認めることを検討してはどうか。
といった議論が行われています。
一人一人の子どもの教育的ニーズに応じた「柔軟な教育課程」、「通常の学級と通級の行き来がより柔軟にできるよう学校長判断で決定できる仕組み」へと変わっていく可能性もあり、従来の障害の有無だけでなく、不登校や外国人児童生徒など多様性を包摂する仕組み(インクルーシブ)が加速することも考えられます。
興味のある方は
https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf
を参照してください。
下線部は、特別支援学校で従来から行われている重複障害のある子どもの教育課程の考え方を参考にしているように思えます。
~特別支援学校の課題~
顕著化している主なものとして、
⚫ 自立活動の時間の指導と各教科等の指導の関連付けが十分ではないとの指摘や、自立活動の実施にあたり、実態把握から指導目標・内容の設定までの考え方・プロセスに課題があるとの指摘もある。
⚫ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては、小・中・高等学校における学びとの連続性の確保を図りつつ、知的障害の特性や発達の段階等を踏まえた対応が必要。
⚫ 小・中・高との交流及び共同学習の機会が十分ではないとの指摘もある。
⚫ 特別支援学校においてもデジタル学習基盤の活用状況に課題がある。
考えられる方向性として
◇ 自立活動について、各教科等との関連付けをこれまで以上に徹底し、自立活動の時間に加えて、学校の教育活動全体の取組となるよう、見直しを図る方向で検討してはどうか。
◇ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては 、小・中・高の各教科に準じつつ、障害の特性や発達の段階等を踏まえた構造化を検討してはどうか。
◇ デジタル学習基盤の活用について、 検討しては障害の状態や特性等を踏まえた活用の在り方についても明らかにしてはどうか。
◇ 交流及び共同学習については、その意義として、障害のある子供と障害のない子供がともに協働的に学び合うことの重要性を示す方向で検討してはどうか。
#12、#13とも関連する内容だと思います。詳しく知りたい方は以下のURLを参照してください。
https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf
なお、交流及び共同学習に関する論点に本校と七飯中学校で実施している「インクルーシブな学校運営モデル事業」が取り上げられています。
~学習評価について~
次期学習指導要領に向けて議論が活発化しています。
現行の学習評価は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で目標に準拠した評価を行い、総括した評価が行われていますが、今、議論されているのは「知識・技能」「思考・判断・表現」で目標に準拠した評価を総括し、「学びに向かう力・人間性」を個人内評価とするものです。
背景には「学びに向かう・・・」は評価の基準が教師によって異なる(発言回数や提出物、授業態度などを評価する)ことや、メタ認知といわれるものを評価することの難しさがあるようです。
こうした考えに対し、「子どものやる気を評価しないのか」や「知識偏重に陥るのではないか」といった意見もあるようです。
「学びに向かう・・・」を評価しないのではなく、むしろ変化の激しい社会において「学びに向かう・・・」は特に重要であり、個人内評価としつつも、「初発の思考や行動を起こす力、好奇心、学びの主体的な調整、他者との対話や協働、学びを方向付ける人間性など」は、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」の評価の過程でも見とれる場合があり、特に見とれた場合には、「思考力・判断力・表現力」の観点別評価に〇を付けるといった方法で議論が進んでいます。
こうした議論に目を向けると、今後の教育課程編成や授業づくり、学習評価の参考になると思います。詳細は、以下のURLを参照してください。
https://www.mext.go.jp/content/20250711-mxt_kyoiku01-000043568_03.pdf
令和8年度の七飯養護学校では「子どもを真ん中に」を合言葉に、保護者や地域の皆様と共に歩む学校づくりを進めてまいります。
学校経営方針を具体化するため、教職員のプロジェクトチームを中心に本年度の教育活動のグランドデザインを策定しました。