普段、子どもがスクールバスを利用していたり、仕事などで学校行事への参加が難しかったりするなど、日頃なかなか直接お会いする機会が少ない保護者がいます。「顔が見えないと、こちらの思いが伝わっているか不安になる」と感じることもあるかもしれません。
しかし、「会えない=学校に関心がない」ではありません。仕事や家庭の事情で来校できなくても、我が子を思う気持ちは共通です。
むしろ、滅多に会えないからこそ、たまに会えた時の「印象」が大切になります。
接点が少ない保護者の方から「この先生なら安心だ」と信頼を寄せていただくための、3つのアプローチを共有します。
1 「文字」を味方につける 〜日常の小さなプラスの共有〜
顔を合わせられないからこそ、連絡帳やプリントなどの「文字」が強力な架け橋になります。
・「事実+褒め言葉」を連絡帳に
提出物などの連絡事項だけでなく、「今日、〇〇さんが友達を助けてくれました」「係の仕事を最後までやり遂げてくれました」といった具体的なプラスの姿を、ほんの2~3行書き添えてみてください。
2 「電話」のハードルを下げる 〜「事件・事故」が起きる前にかける〜
保護者への電話が「トラブルや怪我の報告」だけになってしまうと、着信画面を見ただけで保護者は身構えてしまいます。
・「1分間のハッピーテル」のすすめ
何事もない平和な時にこそ、電話をかけてみましょう。
「いつもお忙しい中、提出物等にご協力いただきありがとうございます。最近、〇〇さんが授業中とても良い表情で挙手してくれるので、嬉しくなって電話してしまいました。お家での様子はいかがですか?」
これだけで、保護者の警戒心は解け、強力なファンになってくれます。
3 「たまの出会い」を最高の瞬間に 〜個人面談や行事での演出〜
年に数回の個人面談や、学校行事など、数少ないリアルな接点は最大のチャンスです。
・ウェルカムの姿勢を全身で表す
「いつもお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます」という感謝の先制パンチ。「やっとお会いできて嬉しいです!」という笑顔とアイコンタクト。
・「私、あなたのお子さんをしっかり見ています」を証明する
お目にかかれたとき、まずはその子の「最近の具体的な良いエピソード」から話を始めます。これにより、「この先生はうちの子をよく見てくれている」という安心感が生まれます。
保護者との信頼関係は、劇的な大イベントで生まれるものではありません。日頃の丁寧な言葉遣い、提出物への一言コメント、電話での明るい声といった「小さな丁寧さの積み重ね」によって作られます。
「いつもお会いできないからこそ、お伝えしたいことがあります」そんな温かい姿勢で、普段お目にかかる機会の少ない保護者とも、つながっていきましょう。
私たちが日々の教育活動の中で、時に混同しやすい、あるいはその境界線に悩むことがある「人権尊重」と「障がい特性に応じた指導(合理的配慮・個別の指導)」の「違い」と「つながり」について、共有します。
一言で言えば、これらは対立するものではなく、「人権尊重という土台の上に、障がい特性に応じた指導が成り立つ」という関係にあります。
〔2つの概念の違いと関係性〕
この2つを明確に区別し、適切に組み合わせることで、子どもたちの「生きづらさ」を解消することができます。
| 項目 | 人権尊重 | 障がい特性に応じた指導(合理的配慮など) |
| 基本的なスタンス | 全ての児童生徒を「一人の尊い人間」として一律に大切にすること。 | 障がいや特性という「個別の違い」に焦点を当てて、具体的に対応すること。 |
| 目指すもの | 差別や偏見をなくし、誰もが傷つけられない安心・安全な環境をつくる。 | 学びや生活の「障壁(バリア)」を取り除き、教育の機会均等と自己実現を保障する。 |
| 具体的なアプローチ |
・言葉遣いや態度の尊重 ・プライバシーの保護 ・意見を聴く姿勢 |
・視覚的なスケジュール提示 ・感覚過敏への環境調整(イヤーマフ等) ・ICT機器の活用、課題量の調整 |
| イメージ | 全員に同じ「安心の土台」を用意する。 | 階段を登るのが難しい子に「スロープ(補助)」を用意する。 |
〔なぜ、この違いを意識する必要があるのか?〕
1 「人権尊重」だけで終わらせない
「私はどの子も差別せず、平等に優しく接しています」という姿勢は素晴らしいものです。しかし、言語理解の難しい子や聴覚過敏のある子に「大きな声で指導したり、指示の多い授業では、その子どもの「分かる・見通せる」環境にはなりません。
人権を尊重しているからこそ、その子の困っていることに気付き、具体的な環境調整や指導法の工夫(=特性に応じた指導)へ進む必要があります。
2 「特性に応じた指導」を特別扱い(特権)にしない
他の児童生徒から「なぜ〇〇君だけ△△を使っていいの?」「ずるい」という声が上がることがあります。
ここで重要なのが、「必要な配慮を行うことは、その子の学ぶ権利を守るための『人権尊重』の行動であり、ずるいことではない」という共通理解です。特別扱いではなく、スタートラインを揃えるためのプロセスであることを、教職員間や保護者、児童生徒に丁寧に伝えていきましょう。
先生方に意識していただきたいのは、「その指導や配慮は、子どもの自立と尊厳につながっているか」という視点です。
特性に応じた指導は、大人が先回りして全てを助けることではありません。子ども自身が「自分はこういう工夫があればできるんだ」と自信を持ち、自分の特性と付き合っていく力を育むことを目指します。これこそが、「20年後の姿」や「自分の明日をデザインすること」につながる、子どもの「人権」を最も尊重した教育的なかかわりです。
悩んだときは、一人で抱え込まず、学年主任、学部主事、コーディネーター、そして管理職も巻き込んで、組織で最善のステップを考えていきましょう。
子どもたちの可能性を広げるため、「子どもを真ん中に」これからも一緒に丁寧な実践を積み重ねていきましょう。
1学期も後半に入り、子どもの良い面だけでなく、学習や生活面での「課題」も見え始めてくる時期ではないでしょうか。
「何度言っても身支度をしない」 「授業中の私語が止まらない」 「ルールを守れない」
そんな子どもを前に、指導の難しさを感じ、時には焦りや苛立ちを覚えてしまうこともあるかもしれません。そんなとき、ぜひ試していただきたいのが、行動分析学の理論である「シェイピング(行動形成)」というアプローチです。
シェイピングとは・・・。
一言で言えば、「最終目標を一気に求めず、階段を一段ずつ登るように、スモールステップで目標に近づけていく方法」です。
私たちは無意識のうちに、子どもに「完璧な状態」を求めてしまいがちです。しかし、それができない子どもに対して「なぜできないんだ」と叱責しても、行動は改善しません。それどころか、生徒の自己肯定感を下げ、反発を生む原因にもなります。
シェイピングでは、目標を細かく分解し、「少しでも、目標に近づく行動ができたら、その場で認めて褒める」というステップを繰り返します。
〔学校現場での具体例〕
【例1:身支度をしない子ども】
・×NGな対応:「エプロンや連絡帳を所定の位置に置くまで、そのことをやらせ続ける」
・〇 シェイピング: 1. まず「カバンを開けたこと」を褒める。 2. 次は「連絡帳を出せた(持った)こと」を褒める。 3. 最終的に「身支度」へ繋げる。
【例2:授業中に立ち歩いてしまう生徒】
・ × NGな対応:「授業中、1回も席を立つな」と厳しく接する。
・ 〇 シェイピング:①最初の5分間、席に座っていられたら「よく集中しているね」と声を掛ける(認める)。②次の10分、その次は15分……と、徐々に基準を伸ばしていく。
〔3つのポイント〕
1 初期設定は「低すぎる」くらいでいい
スタートのハードルは、その子どもが「確実にできるレベル」まで下げてください。
2 「できた瞬間」にフィードバックする
時間が経ってからでは効果が薄れます。その場での一言、あるいはすれ違いざまの「さっきの良かったよ」が、子どもの次の行動を引き出します。
3 ステップを戻すのは「指導の失敗」ではない
次のステップに進んで失敗したら、基準が高すぎたということです。また一つ前のステップに戻れば良いだけです。焦る必要はありません。
子どもの行動を変えるのは、感情的な叱責ではなく、「適切なステップのデザイン」と「ポジティブな関わり」です。
先生方の心の余裕が、生徒の確実な変容を生み出します。ぜひ、日々の学級経営や教科指導のヒントにしてみてください。
〜アンガーマネジメントのすすめ〜
特別支援学校の毎日は、予測不可能な出来事の連続です。子どもたちのパニックや、意思疎通がうまくいかないもどかしさに直面したとき、私たちも人間ですから、「イラッ」としたり、感情が揺さぶられたりするのはごく自然なことです。決して「怒ってはいけない」わけではありません。
大切なのは、その湧き上がった怒りの感情とどう付き合い、どうコントロールするか(アンガーマネジメント)です。私たちの笑顔と子どもたちの安心を守るための、簡単な3つのステップをご紹介します。
1 怒りのピークは「最初の6秒」:まずは深呼吸
脳が強い怒りを感じてから、理性が働き始めるまでに約6秒かかると言われています。この6秒を衝動的な言葉や行動で返してしまうと、子どもを傷つけたり、関係性をこじらせたりする原因になります。
〇 実践:「あ、今イラッとしたな」と思ったら、心の中で数を数えるか、ゆっくりと深呼吸をしてください。相手(子ども)から少しだけ物理的に目線を外すのも効果的です。
2 「〜すべき」のハードルを下げる
私たちの怒りの背景には、往々にして「〜すべき」「〜するのが当たり前」という強い思い込みがあります。
・「静かに着席すべき」
・「言われた通りに行動すべき」
本校の先生方は、十分ご承知の通り、子どもたちにはそれぞれの特性や、その日の体調、環境による理由があります。「〜すべき」を「〜だといいな」「まあ、そんな時もあるか」に少し緩めてみるだけで、心のトゲが丸くなります。
3 私たちの「心のコップ」を満たす
水がなみなみと入ったコップは、少しの振動で溢れてしまいます。教職員自身の心に余裕がないと、子どもの小さな行動にも過剰に反応してしまいがちです。
〇 実践:勤務時間が終わったらしっかり休む、同僚と「今日こんなことがあってね」と抱え込まずに話す(吐き出す)、自分の好きな時間を5分でも作る。先生方自身のケアこそが、最良の専門教育の土台です。
先生方が心身ともに健康で、笑顔でいること。それ自体が、子どもたちにとって最も安心できる環境になります。一人で抱え込まず、チームで補い合っていきましょう。#38~#45も参考にしてください。
自分の不機嫌な態度(ため息、乱暴な物の扱い、無言の圧迫感など)を周囲にまき散らし、他者に過度な気遣いや精神的苦痛を与える行為をフキハラ(不機嫌ハラスメント)といいます。
多くの場合、本人は「忙しくて心の余裕がないだけ」と無自覚なのが特徴です。
多忙を極める学校現場では、つい感情が態度に出てしまいがちです。しかし、職員室がピリピリした空気に包まれると、以下のような弊害が生まれます。
〇 報・連・相の遅れ:「今、話しかけたらまずいかな…」という躊躇が、重大なトラブルの共有遅れに繋がります。
〇 同僚性の低下:互いに顔色を窺い合うようになり、チームでの協力など、組織的対応が難しくなります。
〇 生徒への伝染: 先生方のストレスや緊張感は、子どもたちにも敏感に伝わります。
「自分の機嫌は自分で取る」ための3つの意識
教員も人間ですから、イライラや疲れを感じるのは当然です。大切なのは、それを「周囲にまき散らさない」というプロ意識です。
1 自分の状態に気づく:「今、自分はピリピリしているな」と自覚する。
2 一呼吸置く:感情的に反応しそうな時は、深呼吸や水分補給で「間」を作る。
3 言葉で伝える:余裕がない時は態度で示さず、「今ちょっと手が離せないので、15分後でもいい?」と言葉で伝える。
先生方が安心して笑顔で働ける職場であってこそ、子どもたちに良い教育を還元できます。互いに声をかけ合い、風通しの良い職員室を一緒につくっていきましょう。
#38~#45も参考にしてください。
9月の地域参観日に参加いただいた皆様、ありがとうございました。
令和8年度の七飯養護学校では「子どもを真ん中に」を合言葉に、保護者や地域の皆様と共に歩む学校づくりを進めてまいります。
学校経営方針を具体化するため、教職員のプロジェクトチームを中心に本年度の教育活動のグランドデザインを策定しました。