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SEVEN☆RICE~ぼちぼちいこか

#20 「楽しさ」を考える(令和7年9月1日)

 子どもに知識や技能を授けようとするときに、よく行われる方法として課題分析があります。例えば歯磨きをするときに、①歯ブラシに歯磨き粉を付ける。②歯ブラシを口の中に当てる。③うがいをする。などの手順で、「できているところ、できそうなところ、できていないところ」を評価し、指導を進める方法です。

 

 私は教員時代、子どもの余暇を研究している時があり、家庭でも楽しめるようにトランプを教えていました。筑波大学の野呂先生に「楽しさを課題分析してはどうか」と助言され、「どきっ!」としたことを今でも覚えています。

 

 当時「ババ抜き」をしていて、このゲームの楽しさは「数字をマッチングすること」と「ジョーカーを引かないこと」です。特に数字をマッチングすること(スキル)は、子どもたちも理解しやすく、すぐに覚えます。しかし、ジョーカーを引いてしまったときの感情や対応の仕方を教えることやジョーカーを引かなかった時のうれしさを子どもに教えることは、なかなか難しいです。そのため、配るトランプの枚数を少なくし、このことが起こりやすい状況をつくり、繰り返しの指導をしました。そうすると、絶対に勝ちたい(いわゆる1番病)の子どもも、ジョーカーを引く頻度が多いので、勝つことだけにこだわなくなったり、あまり感情を出さない子どももトランプを抜くときのドキドキ感を表情に出すようになったりするほか、休み時間に自発的にトランプを楽しむ様子が見られるようになりました。

 

 この時の学びを生かして、別の子どもたち(小学部中学年)には「自転車に乗ること」を教えました。自転車に乗る楽しさを「風を切る爽快感」と「バランスをとるハラハラ感」とし、最初に行ったのが、ペダルを外して、坂道を下ることです。「危ない」と思う人もいるかも知れませんが、危なさは子どもが一番分かっているので、転びそうになる前には、足をついて減速しますし、バランスが取れているときには、笑顔で風を切る爽快感を楽しんでいました。こうして楽しさを十分に味合わせてから、ペダルを漕ぐことも教えました(多分、ペダルこぎから教えたら、楽しくなかったと思います)。

 しばらくすると指導していた子ども全員が乗れるようになったので、グランドや校舎まわりを時間いっぱい走ったり、交通公園に入って信号を守ることや一時停止することなど交通ルールを指導しました。こうした様子を保護者にも実際に見てもらうことで、「家庭によっては見通しのよい道路で子どもとサイクリングに出かけた」という報告を受け、嬉しかったことを覚えています。

 

 夏休み、本校の高等部1年生生徒と先生方がチームを組んで、ティーボール大会に出場しました。分校では子どもたちの絵画や書道作品を「いさりび鉄道作品展」に出展しました。学校で行う活動には、楽しい要素がたくさん詰まっていると思います。「楽しさ」を課題分析して、子どもたちが「楽しさ」を感じられる活動をたくさん行ってほしいと考えています。

#19 行動上、課題のある生徒への対応を考える(令和7年8月25日)

※終業式の日に本校集会でお話した内容です。

 「個人攻撃の罠」という言葉をご存知だろうか。行動分析の言葉であるが、行動変容を求める手立てを行うのではなく、「家庭的に保護者が難しいから」や「あの子は変わらない」、「担任団が悪い」「協力を得るのが難しい」など、人のせいにして十分な手立てを施さないことを「個人攻撃の罠に陥る」という。

 本校には無縁かもしれないが、個人攻撃の罠に陥らないため、私の事例をもとに上げたい。14年間の教員生活の半分は行動上大変と言われる子どもを担任してきた。私の教員人生の価値観を変えたのは約25年前に知り合ったsさん。高等部の3年間を担任していた。IQの程度でいうと40程度ある自閉症を合わせ有する生徒であった。高1の終わり頃から、家庭で大変ということで登校がままならなくなった。

 学校に登校しても、トイレに長時間こもったり、特定の職員をみては、興奮したり、小学部など、小さい子どもの声に反応しては大きなトラブルに発展していた。体重が100キロある生徒であり、一度トラブルが起こると、モノは壊れ、人は怪我をする、気持ちも折れる、そんな毎日であった。どういった状況でトラブルが起きているかデータをとったところ、特に多かったのが、給食の時に特定の職員を見かけ追いかけ回すということであった。

 食べることが大好きなsさんであったが、データに基づき、私は担任として学部主事と管理職、保護者に給食を止めて、自炊すること、日課は集団とは別日課を原則とすることを提案し、了承を得た。基本的には別室対応で、1-1の指導を行い、例えば、うどんを作るとなれば、朝から小麦粉を踏み、生地を寝かす時間には課題学習を行ったり、軽作業を行った。教育課程上の位置付けは自立活動を中心とした。

  食費は保護者から月に1万円負担してもらった。この取組から学んだことは、活動で支えることです。知的障害と自閉症や発達障害を持つ子どもたちに私たちの正論をぶつけても、こちらが期待している行動をすることは難しい場合が多い。自然発生的に望ましい方向に行動変容することは、ほぼない。だとしたら、問題行動が起きにくい状況づくり、すなわち問題を起こすからこそ、具体的な活動で子どもの行動を支えることの大切さを学んだ事例です。

 この事例には続きがあって、月曜日から金曜日まで、担任である私がsさんを個別で見ることは他の生徒もいることから難しかった。そのため、学級付き、学部付きの先生が同じ取組を行うだけでなく、小さな子どもを不用意に近付けないなど、他学部の先生にも自分ごととして、協力をいただいた。

 具体的な方針のもと、子どもを行動で支えるうえで、チームで取り組むことの重要性を学んだ取り組みであった。こうした取組の結果、問題行動が激減し、卒業時期には問題行動も激減し、行事への参加や一部の授業には集団参加が可能な状態となり、進路も決定した。

 本校には、様々な背景を持つ子どもが在籍している。本校では年間約1,000時間の授業時数を配当し、指導を行っている。3年間で3,000時間、6年間で6,000時間、12年間で12,000時間である。この貴重な時間が「個人攻撃の罠に陥らないよう」また、本校の教育が次のステップに進むためには「学校が楽しい」と子どもが感じる授業づくりが重要になると考えている。

 教員時代の私が管理職や周囲の先生方に協力いただいたように、積極的なアプローチは特別日課も含め、校長として応援したい。これまでの指導を振り返っていただき、「子どものために、チームとして」必要に応じて2学期以降の実践を改善してほしい。

#18 教育課程企画特別部会の議論に触れる③(令和7年7月17日)

~特別支援教育に関わる小・中・高の課題~

 通常の学級、通級による指導、特別支援学級に関わる課題と方向性が議論されていますが、ここでは通級による指導について触れます。

 主な課題として

⚫現行の制度では、障害による困難の改善・克服を目的とした指導(自立活動)と通常の学級での授業で構成されており、通級による指導を利用している子供も含めて、通常の学級に在籍する障害のある子供たちは、障害のない子供と同一の目標や内容で各教科の学習に取り組むことが前提であり、通級による指導においては各教科について教育課程上の特例的な取扱いはできないなど、障害の状態等に応じたきめ細かな指導の実現に課題がある。

 

 方向性として

◇通級による指導において、障害の状態等を踏まえ、特に必要がある場合には、各教科の指導を行うことも可能とすることや、通級による指導の授業時数の上限を見直すことを検討してはどうか。

◇各教科の指導に当たっては、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したものに替えることや取り扱わないことなど、児童生徒の障害の状態等に応じた教育課程の編成を認めることを検討してはどうか。

◇通常の学級においても障害の状態等を踏まえ特に必要がある場合には、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したもに替えることや取り扱わないことなど、児童生徒の障がいの状態等に応じた教育課程の編成を認めることを検討してはどうか。

といった議論が行われています。

 

 一人一人の子どもの教育的ニーズに応じた「柔軟な教育課程」、「通常の学級と通級の行き来がより柔軟にできるよう学校長判断で決定できる仕組み」へと変わっていく可能性もあり、従来の障害の有無だけでなく、不登校や外国人児童生徒など多様性を包摂する仕組み(インクルーシブ)が加速することも考えられます。

 

興味のある方は

https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf

https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf

を参照してください。

 下線部は、特別支援学校で従来から行われている重複障害のある子どもの教育課程の考え方を参考にしているように思えます。

#17 教育課程企画特別部会の議論に触れる②(令和7年7月16日)

~特別支援学校の課題~

 顕著化している主なものとして、

⚫ 自立活動の時間の指導と各教科等の指導の関連付けが十分ではないとの指摘や、自立活動の実施にあたり、実態把握から指導目標・内容の設定までの考え方・プロセスに課題があるとの指摘もある。

 ⚫ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては、小・中・高等学校における学びとの連続性の確保を図りつつ、知的障害の特性や発達の段階等を踏まえた対応が必要。

 ⚫ 小・中・高との交流及び共同学習の機会が十分ではないとの指摘もある。

 ⚫ 特別支援学校においてもデジタル学習基盤の活用状況に課題がある。

 

 考えられる方向性として

 ◇ 自立活動について、各教科等との関連付けをこれまで以上に徹底し、自立活動の時間に加えて、学校の教育活動全体の取組となるよう、見直しを図る方向で検討してはどうか。  

 ◇ 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては 、小・中・高の各教科に準じつつ、障害の特性や発達の段階等を踏まえた構造化を検討してはどうか。

 ◇ デジタル学習基盤の活用について、 検討しては障害の状態や特性等を踏まえた活用の在り方についても明らかにしてはどうか。

◇ 交流及び共同学習については、その意義として、障害のある子供と障害のない子供がともに協働的に学び合うことの重要性を示す方向で検討してはどうか。

 

 #12、#13とも関連する内容だと思います。詳しく知りたい方は以下のURLを参照してください。

https://www.mext.go.jp/content/20250704-mext_kyoiku01-000043568_05.pdf

 なお、交流及び共同学習に関する論点に本校と七飯中学校で実施している「インクルーシブな学校運営モデル事業」が取り上げられています。

#16 教育課程企画特別部会の議論に触れる①(令和7年7月15日)

~学習評価について~

 次期学習指導要領に向けて議論が活発化しています。

 現行の学習評価は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で目標に準拠した評価を行い、総括した評価が行われていますが、今、議論されているのは「知識・技能」「思考・判断・表現」で目標に準拠した評価を総括し、「学びに向かう力・人間性」を個人内評価とするものです。

 背景には「学びに向かう・・・」は評価の基準が教師によって異なる(発言回数や提出物、授業態度などを評価する)ことや、メタ認知といわれるものを評価することの難しさがあるようです。

 こうした考えに対し、「子どものやる気を評価しないのか」や「知識偏重に陥るのではないか」といった意見もあるようです。

 「学びに向かう・・・」を評価しないのではなく、むしろ変化の激しい社会において「学びに向かう・・・」は特に重要であり、個人内評価としつつも、「初発の思考や行動を起こす力、好奇心、学びの主体的な調整、他者との対話や協働、学びを方向付ける人間性など」は、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」の評価の過程でも見とれる場合があり、特に見とれた場合には、「思考力・判断力・表現力」の観点別評価に〇を付けるといった方法で議論が進んでいます。

 こうした議論に目を向けると、今後の教育課程編成や授業づくり、学習評価の参考になると思います。詳細は、以下のURLを参照してください。

https://www.mext.go.jp/content/20250711-mxt_kyoiku01-000043568_03.pdf