「主体的・対話的で深い学び」や「個別最適な学び」など、多くの専門用語が飛び交っています。「結局、これらはどうつながっているの?」と感じることもあるかもしれません。
これらは決してバラバラのものではなく、すべてが子どもたちの成長という「一つのゴール」に向かってつながっています。今日は、それを「未来への航海」に例えます。
1 育成すべき資質・能力 =「目的地」
私たちが目指すゴール、それは子どもたちに「育成すべき資質・能力(生きて働く知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性)」を育むことです。
航海にたとえるなら、これは「目指すべき新大陸(目的地)」です。荒波の未来を生き抜くために、どんな力を身に付けさせて送り出すか。すべての教育活動は、この目的地にたどり着くためにあります。
2 主体的・対話的で深い学び =「航海そのもの(学びの質)」
目的地に向かう船の上で、子どもたちはただ座っているだけでは力はつきません。
自分で進路を考え(主体的)、仲間と知恵を出し合い(対話的)、物事の本質に迫る(深い学び)。この「ワクワクする航海そのもの」が、主体的・対話的で深い学びです。授業をこのような「質の高い経験」にすることが重要です。
3 個別最適な学びと協働的な学び=「進み方のエンジン」
では、その航海をどう支えるか。エンジンとなるのが、この2つのアプローチの往還です。
· 個別最適な学び(ソロ・モード):
子どもたちの興味や習熟度は一人ひとり違います。それぞれの現在地に合わせて、自分に合ったペースや方法で力を蓄えさせます(自分に合う道具や、個人トレーニング)。
· 協働的な学び(チーム・モード):
一人で学んだ持ち味を活かし、多様な仲間と力を合わせて集団で課題に挑みます(チームでの操船訓練)。「個」で深め、「協働」で広げる。
この2つが交互に機能することで、航海は力強く進みます。
3 なぜ「論点整理」が必要なのか
教育の内容が専門化・複雑化し、かつ社会の変化(AIの台頭やグローバル化など)が早くなっているため、「教科ごとの積み上げ」だけでは、時代に合ったカリキュラムを作ることが難しくなっています。
「論点整理」を行うことで、以下のようなメリットが生まれています。
· 優先順位の明確化:「何を減らし、何を増やすべきか」の議論を避けない。
· 国民への説明責任:なぜその教育が必要なのか、その根拠を早い段階で社会に示せる。
· 現場の準備:新しい教育の方向性を、実施の数年前から学校現場が把握できる。
「何ができるようになるか」へのシフト(資質・能力の育成)
以前は「教科書の内容をどれだけ教えたか(知識の習得)」が重視されていましたが、現在は「学んだ知識をどう活用し、社会で何ができるようになるか」という「資質・能力」の育成が中心になっています。
· 知識・技能の習得
· 思考力・判断力・表現力
· 学びに向かう力・人間性
これら3つの柱を軸に指導内容を構成するよう、プロセス全体が設計されています。
「論点整理」は、「専門家だけで教育内容を決める時代」から、「社会と対話し、論点を共有しながら教育を作っていく時代」への変化を象徴するプロセスと言えます。
平成27年以降、この手法が「標準」となったことで、学習指導要領の改訂は、よりオープンで、かつ大きな教育目標に沿った一貫性のあるものへと進化しています。
本校の教育課程検討委員会でお話しした内容です。
1 「論点整理」が始まった背景
平成27年以前の改訂プロセスでは、文部科学大臣からの諮問を受けた後、中央教育審議会(中教審)の各部会でいきなり専門的な(教科等の)議論がスタートすることが一般的でした。
しかし、平成27年の改訂検討の際、文部科学省は「教育課程企画特別部会」という横断的な組織を設置しました。この部会では、各教科・科目をバラバラに議論する前に、「これからの社会にどんな力が必要か」という全体像(論点)を先に整理するというプロセスをとりました。
平成27年:「教育課程企画特別部会」が「論点整理」を初めて公表。これをベースに、育成すべき資質・能力を身に付けることを目指し、各教科の具体的な内容を議論する形式が確立。
令和7年(次期改訂に向けた議論):同様のプロセスが踏襲され、令和7年9月に再び大規模な「論点整理」が公表されました。
https://www.mext.go.jp/content/20250904-mxt-kyoiku-000043994_03.pdf
2 「論点整理」がある場合とない場合の違い
以前の進め方と比べると、以下のような違いがあります。
| 特徴 | それ以前(平成22年頃まで) | 現在(平成27年以降~) |
| 議論の広がり | 各教科・科目ごとの議論が先行しがちだった。 | 全体像(資質・能力の三つの柱など)が先に決まる。 |
| 透明性 | 専門家同士の議論が中心で、方針が外から見えにくかった。 | 「論点整理」として議論の土台が公開され、国民が方向性を早期に理解できる。 |
| 連携 | 教科間の横断的な視点が生まれにくかった。 | 全体目標を共有した上で各教科が議論するため、一貫性が保たれる。 |
3 校内で実践するための「3つのステップ」
学校現場で機能的アセスメントを活用する際は、以下のステップで組織的に進めていきましょう。
1 事実のみを客観的に記録する:まずは1〜2週間。
「わがままを言った」「サボろうとした」といった教師の主観(感情・解釈)は交えず、「プリントが配られた(A)」「机に突っ伏した(B)」「休み時間までそのまま過ごした(C)」のように、目に見える事実だけをABCの枠組みで記録します。
2 ケース会議で「機能」を仮説立てる
学年主任やコーディネーター、学部主事等と「この子は課題が難しくて逃げたかった(逃避の機能)のではないか」と行動の目的を推測します。背景にある特性(見通しが持てない、感覚過敏など)も考慮します。
3 「適切な代替行動」を教える
行動マトリクス(PBSの考え方)などを用いて「大声を出すのをやめなさい」と禁止するのではなく、同じ機能を満たす適切な方法を教えます。例えば、逃避が目的なら「『手伝ってください』のカードを出す」、あるいは「『1分休憩します』と伝える」といった代替行動を練習させ、それができたら徹底的に褒め、要求を叶えます。
私たち特別支援教育の専門家は「困った行動をする子」ではなく「今、本人が一番困っている子」と捉えることが基本です。子どもは自分の気持ちを言葉でうまく伝えられない代わりに、行動でSOSを出しています。
機能的アセスメントの最大のメリットは、教師側が「この子はわざと困らせているわけではない。環境や関わり方に原因があるんだ」と冷静に、前向きに捉えられるようになることです。
担任一人で抱え込む必要はありません。組織で取り組んで行きましょう!
授業中や集団行動の中で「大声を出す」「教室を飛び出す」「パニックになる」といった、対応に苦慮する行動(いわゆる行動障害や課題のある行動)に出会うことがあります。
こうした行動に直面したとき、私たちはつい「どうやって止めさせるか」という対処に目が向きがちです。しかし、子どもたちの支援において大切なのは、行動を力尽くで抑え込むことではなく、「その行動が持つ『意味(機能)』を理解すること」です。
今回は、そのためのツールである「機能的アセスメント(Functional Assessment)」について共有します。
1 機能的アセスメントとは?
機能的アセスメントとは、子どもが特定の行動を起こす「原因(きかっけ)」と、その行動によって得ている「結果(メリット)」を客観的に分析し、その行動が果たしている「機能(目的)」を知る手法です。
応用行動分析の視点に基づき、行動を単発の現象ではなく、以下の「ABC」という3つの要素のつながり(三項随伴性)で捉えます。
・A(Antecedent:先行条件):行動の直前に何があったか(場所、人、指示、環境など)
・B(Behavior:行動):子どもが実際に取った具体的な行動(大声を出す、叩くなど)
・C(Consequence:結果):行動した後に、環境や周囲の反応がどう変化したか
2 不適切な行動が持つ「4つの機能」
子どもたちが起こす行動の目的(機能)は、大きく次の4つのいずれかに分類できると言われています。
| 機能(目的) | 具体的な状態の例 |
| ① 要求・獲得 | 好きなおもちゃが欲しい、注目を浴びたい、褒められたい |
| ② 逃避・回避 | 苦手な課題から逃れたい、うるさい教室から離れたい、休憩したい |
| ③自己刺激(感覚) | 手をひらひらさせる、体を揺らすなど、その行動自体が気持ちいい |
| ④ 嫌悪刺激の除去 | 体調不良(頭痛や腹痛)や、着ている服のチクチク感から逃れたい |
例えば、「授業中に大声を出す(B)」という行動があったとします。
・それが「先生にこっちを向いてほしいから(①注目獲得)」なのか、
・「今の課題が難しくてやりたくないから(②逃避)」なのか、
機能によって、私たちが取るべき支援(アプローチ)は180度変わります。
分校のある先生と児童の関わりを紹介します。4月当初、いわゆる汚言の多い児童でしたが、その機能は教師の注目を獲得するものが多いと判断し、視覚的に適切な関わり方を示しつつ、好ましい行動ができたときに称賛する(注目が獲得)できる取組を継続しています。今では、奇麗な言葉、気持ちのよい言葉が増えてきています!
9月の地域参観日に参加いただいた皆様、ありがとうございました。
令和8年度の七飯養護学校では「子どもを真ん中に」を合言葉に、保護者や地域の皆様と共に歩む学校づくりを進めてまいります。
学校経営方針を具体化するため、教職員のプロジェクトチームを中心に本年度の教育活動のグランドデザインを策定しました。